「だからといって部下に当たり散らしても、何の解決にもなりません。自分を棚上げにしたままでは部下は変わらない。『意識改革だ!』のかけ声は部下ではなく、まず自分に向けるべき。自分が変われば部下の意識は必ず変わります」と、受難の時代の上司にエールを送る。

指導のために叱ることの重要性は、誰もが認めるところだろう。ところがそこで、部下をさとすため理性的に「叱る」のと、感情にまかせて「怒る」ことが区別できていない上司がまだまだ多いと、本間氏は嘆く。

「頭でわかっていても、行動に移せていないケースが多々見られます。理由は単純で、怒りをコントロールする訓練をしていないからなんです」

怒りとは、アドレナリンの上昇をともなうフィジカルな反応である。ならば怒りを抑えるには、頭であれこれ考えるより、体のしくみを利用して鎮めるのが手っ取り早い。

「要は『大きく息を吐け』と。それだけなんですよ」

息を吐くことで副交感神経が優位になり、体がリラックスして「頭にカーッと血が上った」状態が鎮静化される。

「自分が必死に頑張っていると、部下のミスが許せなくなる。それでついつい詰問口調になりがちです。でもね、相手を責めたところで、いいことなんて一つもないんですよ。

責めたくなったら息を吐け、です。そうすれば『君は優秀な人なのにこんなミスをするとは残念だ、次は期待しているよ』などという理性的な叱りの言葉が浮かんでくるでしょう」

また、低血糖状態にあると怒りっぽくなるということも知っておいたほうがいいだろう。

「奈良市長は議会でガムを噛んでいて怒られたけど、おとなしく飴をなめるくらいならいいんじゃないですかね。そのほうがリラックスできますから」

怒ることは、怒った本人にとっても決して気持ちのいいものではない。後になって「言いすぎたかな」と自責の念がこみ上げることもあれば、怒られた部下のモチベーション低下を招くこともあるだろう。そのような事態を避け、自己のストレスを軽減するためにも、怒りを鎮め平静を取り戻す方法はぜひ覚えておきたいものだ。