「聞き上手」になるには、どうすればいいのか。明治大学文学部の齋藤孝教授は「自分の思い込みや偏見や先入観にとらわらず、どんな話でもまっさらな心で耳を傾けることが重要だ。たとえばTikTokをどう評価しているか、ということでも、その姿勢がみえる」という。セブン‐イレブン限定書籍『人生を変える「超」会話力』からお届けする――。

※本稿は、齋藤孝『人生を変える「超」会話力』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

画面上のTikTokとフェイスブックアプリケーションアップルiPhone XR
写真=iStock.com/5./15 WEST
※写真はイメージです

せっかくの新しい情報を手に入れるチャンスを逃している

聞き上手は、なにより自分の思い込みや偏見や先入観にとらわれずに、相手の話を聞くことができます。簡単にいえば、どんな相手のどんな話でも、まっさらな心で耳を傾けることができる人です。

でも、多くの人はこれが苦手なようです。相手の話をどうしても自分の「フィルター(思い込み、偏見、先入観)」をとおして理解しようとしてしまうからです。

その結果、相手の話の趣旨を取り違えたり、反感を覚えたり、すぐに反論したりしてしまいます。

世代間のズレもあります。たとえば、いまの若者は、YouTubeやTikTokなどの動画配信サービスで情報を集め、自らも短時間の動画で気軽に情報発信しています。でも、これまで主に活字情報で育った世代には、動画の便利さやよさがなかなかわかりません。

それならば、素直に若者の話を聞けばいいのですが、「短い動画で深い情報が伝わるわけがない」「インパクトだけで内容が薄い」といった思い込みや先入観があると、素直に話を聞くこともできないわけです。

そうしてますます自分の思い込みにこだわるようになり、偏見だらけの固い頭になっていく。そんな人は、せっかくの新しい情報を手に入れるチャンスをみすみす逃し、自分の世界も広がりません。

現象学を提唱したオーストリアの哲学者フッサールは、「われわれの『見る』ことは、しばしば多くの偏見・先入見に汚染されている」と記し、それらを取り除く訓練の必要性を説いています。

聞き上手は、まさに心を「から」にして話を聞ける人。

さもなければ、他者をいつまでも理解できず、自分もまた成長できずに終わってしまうのです。