2位 水川あさみ『ナイルパーチの女子会』(BSテレビ東京)
いいとこのお嬢さんでエリートだが、女友達との距離を病的なくらいに詰めすぎる厄介な女を演じた。お気楽主婦ブロガー(山田真歩)の抜け感に執着し、次第に支配と管理を始める役どころ。
表情やしぐさには「近寄りたくない」ヤバさがある。独善的なのに悪気はない、常軌を逸しているのに正当性を主張。美人で賢くて裕福なのにとても不憫。恵まれた環境を羨ましいと思わせないのが水川のすごいところ。
眼球の動きで不穏な精神状態を表現。ぞわぞわした。
全国の四十女を震わせた池脇千鶴の名演技
1位 池脇千鶴『その女、ジルバ』(東海テレビ系)
水商売の世界にうっかり足を踏み入れたが、自己肯定感を高めてくれる熟女たちとの出会いによって、四十女の鬱屈がどんどん取っ払われていく様を生々しく見せてくれた。THE共感。全国の四十女が震えた瞬間。無防備な泣き顔もいい。
もともと池脇は無敵の可愛らしさと演技に定評があったものの、ここ10年は寡作の人だ。「かわいらしさに潜む狂気」や「何気ない日常を見せるうまさ」は映画で活きる、と半ば諦めていたが、この作品で改めて世の中のニーズを確認。
常日頃「あー、これが池脇千鶴だったらなぁ……」と思う役が実に多いので、ドラマにもっと出てほしい願いも込めて1位に。
そして、新人賞は湯川ひな『FM999』(WOWOW)。
女子高生の憂うつを淡々と(主にパジャマ姿で)演じた。これくらい自然体でそっけないって稀有。
特別功労賞は桃井かおり『緊急取調室』(テレビ朝日系)。
50年の潜伏を経てハイジャック事件を起こした活動家役。迫力と物悲しさは無二の存在。久々の桃井姐さん、1・2話の登場で、シーズン4全体をガッと牽引した功労者だ。
ここに挙げなくとも称賛されるべき俳優はたくさんいる。来年もねちねちと視聴して、名優たちの一瞬の輝きを脳裏に焼き付けたい。