絶妙なキャスティングに演技で答えた7~10位
10位 石橋菜津美『夫のちんぽが入らない』(フジテレビ系)
ドタバタでもドロドロでもなく、淡々と「入らない」苦悩をつづる役に、石橋の佇まいがしっくりハマった。特性は、純粋と達観の同居。純粋な女をやみくもに演じれば阿呆に見える。達観した女を下手に演じると、はすっぱに見える。純粋だが男性が望むようなウブではない、達観しているが潔くはない。この同居の妙が作品の精度を上げた。
9位 黒木華『イチケイのカラス』(フジテレビ系)、『僕の姉ちゃん』(Amazon Prime先行配信、テレビ東京系で2021年から放送開始)
8位 松たか子『大豆田とわ子と三人の元夫』(関西テレビ系)
黒木と松の役どころには共通項がある。ポイントは「わきまえない女の説得力」。
いずれも知的で聡明な女の役だが、ちょうどいい加減の辛辣を装備。声に出して言うか言わないかは別として、常に心は理論武装。
理不尽な要求を笑顔でいなす社会人のお作法もわきまえてはいるが、女としてはむしろわきまえない。一見ほわわんとした柔らかい印象だが、このふたりの演じる役には快哉を叫ぶことが多かった。
7位 松岡茉優『生きるとか死ぬとか父親とか』(テレビ東京系)
主役・蒲原トキコを演じた吉田羊もめちゃくちゃ素敵だったが、ドラマの後半でトキコの若き日を演じた松岡が印象に強く残っている。
羊は羊で、寛容を装うことができる成熟と達観の年代を演じ、松岡は父親に対する怒りや許せない気持ちを抑えきれない年代を熱演。いいバトンだったなぁ……とつくづく思う。
社会や固定概念と闘う女性を演じるならこの女優
同性なので、女優にはやや理想や願望を押し付けてしまう。
ゆるふわで人畜無害で何でも笑って許してしまう女性よりも、わきまえない女や黙っちゃいない女、したたかな女に惹かれる傾向がある。
また、理不尽な思いをしている女性が声を上げたり、自分の足で一歩前に踏み出すシーンや、苦難をのりこえて成長していく姿も大好物。ということで、6位からはこちら。
6位 渡辺真起子『半径5メートル』(NHK)、『コールドケース3』(WOWOW)
静かで深い憤りと言えば渡辺。特に虐げられてきた女性の心情を、冷静を保ちながら吐露する場面にいつも感銘を受ける。怒りが肌にまで伝わってくる。
『半径5メートル』(第8話)では非正規雇用で理不尽な目に遭ってきた女性の役、『コールドケース3』(第6話)では、女性の味方が皆無の社会に憤りを感じ、被害者にある示唆を与えた元警官役。
どちらも閉鎖的で前近代的な男社会に絶望している。絶望した先の行動にこそ違いはあったが、怒りの火種は胸の奥でくすぶり続けている、そんな心情を見事に表現していた。
『TOKYO MER』(TBS系)では策士な厚生労働大臣役を演じたが、闘う相手が個人ではなく、社会や世間や固定観念のほうがグッと魅力を増す気もする。