海抜が低い地域は、水没への対策を打たなくてはならない。世界一海抜が低いモルディブでいえば、人々が住む島の数を減らし、オランダの干拓や治水の技術を導入する方法が考えられる。国土の約27%が海面下のオランダは、土木工事、浚渫工事の技術が高く、ドバイなどはオランダ企業に工事を発注することが多い。

世界の政治家たちは、心の中でオランダの技術に期待しているだろう。カーボンニュートラルを達成するよりも、海面が2メートル高くなった場合の防衛策を準備するほうが安くつくとわかっているからだ。

寒い地域は灯油なし生活に?

COP26では、35年までに主要市場で、40年までに全世界で販売する新車はすべてCO2などを出さないゼロエミッション車にすると共同声明を出した。

しかし、新車がすべてEVになっても、その前に販売したガソリン車やディーゼル車は、30年ぐらいは走り続ける。全国(あるいは全世界)のガソリンスタンド(SS)はなくせない。

日本の場合、寒い地域のSSは冬になると暖房用の灯油がよく売れる。地域の燃料供給拠点なのだ。また、都市ガスがない地域は、プロパンガス(LNG)を使っている。私は長野県の蓼科たてしなに拠点があって、冬はマイナス20度になるから、農協がLNGのシリンダー(ボンベ)を配達してくれないと生活できない。

脱炭素の話には、全国で必要とされる灯油やLNGへの具体的な対策がない。軽井沢や蓼科に拠点がある身としては、「あっしはどう生活すればいいんでしょう」と尋ねたい。

したがって、日本の脱炭素は省エネで進めるのが一番だろう。1970年代のオイルショック以来、得意技としてきた技術だ。日本の1人当たりエネルギー消費量が、世界トップクラスで少ないのも省エネのおかげだ。

ただし、現状ではまだ足りない。電気でいえば、商業施設、工場、家庭などに分けて考えれば、改善点はいくつもある。

商業施設では、コンビニやスーパーマーケットなどにあるショーケースの電力消費が大きい。ショーケースは外気温が低いときに冷えすぎるなどのムダがあり、センサーによって解決できるはずだ。現在より2倍ほど効率がいいコンデンサは、開発の見通しが立っている。コンデンサを交換するだけで、エアコンやショーケースの電力消費はかなり減るはずだ。

工場ではモーターの電力消費が大きいが、効率が2倍ほどになる製品が開発されている。大型モーターの交換は企業の負担が大きく、補助金を出すなどの支援策も必要だ。格段に効率が高いコンデンサとモーターの開発は超重要課題だ。政府が補助金を出して完成を早めるべきだ。岸田政権が進める、脱炭素・再生可能エネルギーの拡大政策より、よほど現実的かつ効果的だ。