また、テレビではなく、目の前で本物のお笑いを見せたかった、というのもあります。そして、芸人と少年たち、それぞれにポッと光る何かを感じたり、刺激になればいいなとも思っていたのです。
少年院で講演をやることは、僕自身にもやりがいをもたせてくれました。
リーマン・ショックのあと、夢中になって本を読みまくりました。勉強を続けるうちに、得た知識がパズルのようにつながっていき、次に、発表する場ができた。
加えて、このギョロリとした眼、オトコオトコした顔、野球部で鍛えたよく通る大きな声。これは授業に際し、僕の武器でもあって、だから少年たちにも「おい、おまえな」と言えるし、男同士の会話としてやりとりができる。
俳優や芸人をやっているから人前で何かを表現して伝えるのも苦になりません。そういったことを考えると、「『命』の授業」をやる今の状況は、なるべくしてなったのだ、という気がします。
大きな反響
ボランティアですし、ずっと公にせずに続けていました。それが、ニュースや新聞、テレビの情報番組などメディアでも取り上げられると、僕の活動についての問い合わせも相次ぐようになりました。
少年院で講演する様子が最初にドキュメンタリー風に取り上げられたのは、2014年、トークバラエティ番組『ジャネーノ⁉』でした。あばれる君をともなってのその日の「『命』の授業」では、夢をどう実現させるかを漢字を使って解説しました。
これは、未来に希望をもってほしいという思いを込めていて、少年院でよくする話のひとつです。内容を少し紹介すると……。
まず少年たちに問うたのは、つらいときはどうするかということ。
弱音を吐く。「吐く」という字はくちへんに「+」(プラス)と「-」(マイナス)。弱音は吐いてもいい。けれど、その次が大事。成功する人、夢を実現させる人は少しずつ弱音は吐かなくなる。
ポジティブシンキングでマイナスなことを言わなくなってくる。「吐く」から「-」(マイナス)をとるとそう、「叶」です。そうして夢は叶う。実現する……。といった具合です。
その翌年に「『命』の授業」は『中居正広の金スマ』でも紹介され、大きな反響を呼びました。
テレビの影響は大きく、少年院以外からの講演依頼やイベント出演の要請もずいぶん増えました。驚くとともに、今、この時代に「『命』の授業」が求められている意味を、あらためて考えるのです。