診療から薬の処方までできるように

(2)従業員向け診療サービス「アマゾン・ケア(Amazon Care)」

冒頭で述べた通り、アマゾンの従業員とその家族向けの医療サービスとして始まり、2021年夏から全米企業を対象に拡大しました。なおアマゾン従業員向けのヘルスケアサービスについては2018年に、米銀JPモルガン・チェース、米投資・保険会社バークシャー・ハサウェイと、それぞれの従業員向けヘルスケアサービスのジョイントベンチャー「ヘイブン」を設立し、話題となった過去があります。

ヘイブンは2021年に解散しましたが、アマゾンはそれとは別に、独自のヘルスケアサービスを着々と進めていたのでしょう。また2019年10月には、オンライン医療サービスと患者の重篤度選別ツールを開発するヘルスナビゲーター社を買収、アマゾン・ケアと統合しています。

(3)オンライン薬局「アマゾン・ファーマシー(Amazon Pharmacy)」

アマゾン・ファーマシーは、2020年11月にスタートした処方箋のオンライン薬局サービス。すでに全米で展開されています。アマゾン・ファーマシーの機能は、オンラインでの処方薬、医薬品の購入、処方箋の管理、各種保険の登録など。18歳以上のアマゾン会員なら利用できますが、プライム会員には無料配送や提携薬局での処方薬購入に際しての割引などの特典があります。

もともとアマゾンは2018年、医薬品ネット通販/処方箋デリバリーサービスのピルパックを買収し、医薬品のサプライチェーンに本格参入していました。アマゾン・ファーマシーはピルパックの配送サービスを利用することで、慢性病患者向けにクリームや錠剤、目薬、吸入器や薬を30日周期で自動配送するオプションを提供。薬についてわからないことがあれば、薬剤師による24時間年中無休の電話相談も可能となっています。

健康管理のためのウェアラブル端末も

(4)薬の管理を支援する音声認識AI「アマゾン・アレクサ(Amazon Alexa)」のスキル

音声認識AI「アレクサ」のスキルに、ヘルスケア関連の機能が追加されています。例えば、薬局チェーン「ジャイアント・イーグル・ファーマシー(Giant Eagle Pharmacy)」と共同開発した薬の管理を支援するスキル。同スキルを通じて、患者の処方箋に基づいて服薬のリマインダーを設定、必要に応じて補充用の医薬品も注文可能です。また、音声による補充リクエストツールを、薬局向けに投薬及び供給管理サービスを提供する「オムニセル(Omnicell)」と共同開発しています。