人間はもともと不安になる生き物

不安の正体とは、いったいなんでしょうか?

「不安になる」「心配する」という状態はけっして心地いいものではなく、ネガティブな状態としてとらえる人がほとんどだと思います。

しかし、不安になるという“機能”がわたしたちに備わっている以上、それは本来人間にとって必要な力なのだと考えるべきです。

その力とは、不安が持つ「危機察知能力」です。

もし一切の不安を感じない人がいたとしたら……? 例えば、道路を歩くときに「車なんて来るわけがない」と思っていたら、その人はいずれ事故に遭うはずです。

でも実際は、わたしたちは「車が来たらどうしよう」と、無意識下であっても不安を感じています。

つまり、不安という危機察知能力を働かせるおかげで、事故に遭う可能性を減らし、大切な生命を守っているのです。

驚くべきは、この不安になる回数です。人間は1日に6万回もの思考をしているといわれますが、そのうち75%にあたる4万5000回の思考が、「もしこうなったらどうしよう……」というネガティブな思考だというのです。

人間は本質的に、「不安になる生き物」といっていいのです。

意識を不安の正反対に振り切る「逆説志向」

ただ、そうはいっても、やはり不安を感じ過ぎることは問題です。

不安を感じ過ぎるあまり、自信をどんどん失って将来に対する希望も見えなくなってしまえば、それこそ心身の疾患を招きかねません。

ましてや、そのときサポートしてくれる人がそばにいなければ、社会生活を営めなくなる可能性があり、うつ病になってしまうこともめずらしくはないのです。

そんな不安が増した状態に向き合うにはどうすればいいでしょうか。

もともとの生育環境などは変えがたいものですが、その事実を認めたうえで、自分で変えていける面を探すことはもちろんできます。

そのひとつとして、わたしはフランクルが編み出した心理療法である「逆説志向」が有効だと考えています。

これは簡単にいえば、いま悩んだり不安を感じたりしていることの逆の方向へと、意識的に思考を振り切る方法です。