監査役会は社長の「翼賛機関」だった

東証一部上場企業の電気興業がガバナンス不全の泥沼に陥っている。筆者はプレジデントオンラインで、これまで6月25日付8月13日付の2回、この問題を取り上げてきた。

ひとことでいえば、松澤幹夫前社長が女性社員に対するセクハラで退任に追い込まれたにもかかわらず、電気興業は「社長交代は世代交代によるもの」というウソをついた。その結果、次々に新たなウソを重ねることになり、最高意思決定機関である株主総会で株主をも欺かなければならない事態に至っている。

電気興業の松澤幹夫前社長
電気興業の松澤幹夫前社長(写真=電気興業第94期報告書より

前回までの記事では、電気興業の企業統治の不全において、その要となる社外取締役がまともに機能していないことを指摘した。しかし電気興業が抱える問題はそれだけではない。実は監査役会も機能せず、松澤幹夫前社長の翼賛機関のような状況だった。

松澤幹夫前社長のセクハラや交際費に不明朗な点が多い点などについて、監査役会は調査報告書をまとめてはいるが、調査のプロセスから見ても、結果から見てもザル同然だった。そればかりか、問題のすり替えも行われていたのではないか。

目的がすり替えられていった調査報告書

電気興業の監査役会は、前社長が女性社員に対して働いたセクハラや、不透明な交際費支出、利益相反取引に関し、中間報告を含めて3つの調査報告書を作成している。

2月に開かれた臨時取締役会では社内取締役の合意により、松澤氏の社長解任を決議する運びになっていたが、決議の直前に松澤氏が社長退任と後継社長指名の緊急動議を提出。松澤氏の解任は宙に浮いてしまっていた。その3カ月後に作られたのが中間報告である。

5月10日に調査の中間報告を書面にまとめ、同21日に内容を補足する形で最終的な調査報告書を作り上げた。しかし議論の結果、作成し直すことになり、6月1日に「調査結果報告書」としてまとめ上げている。

不可解なのは、当初は松澤氏のセクハラや不明朗な支出を調べる目的だったのが、松澤氏の問題行動にストップをかけなかった側近らの責任追及が大きく取り上げられ、セクハラなどの責任追及が権力闘争やクーデターにすり替えられていたことだ。