「交際費」名目で数万円の食品を買い続けた
監査役会は、松澤氏の交際費についても体裁を取り繕うだけの調査で済ませている。「電気興業の利益との比較で、交際費の額は大きいとは言えない」として、松澤氏をお咎めなしとしたが、交際費の具体的な内容については精査していない。
松澤氏が交際費で購入した領収書に目をやると、大手デパートでローヤルゼリーやパプリカ、納豆、ヨーグルト、健康食品など、消費税の軽減税率が適用されている品目、つまり食品を数万円ずつ数日おきに購入し、これを交際費で落としていたことがわかる。宛名や日付は空欄のままになっている領収書も多い。関係者によれば、空欄になっていた宛名を秘書室が書き込んでいたようで、たしかによく似た筆跡のあて名書きが並んでいるが、監査役会の調査ではこれにも目をつむった。
松澤氏が被害者女性に買い与えようとして受け取りを拒まれた37万円のゴルフ道具代金の返金もあいまいなままだ。監査役会の報告書では代金について、「報酬の自主返納により会社に返済されていると認められる」と片付けており、37万円は報酬の自主返納分に含まれているらしい。
不適切支出の返金すら確認できていない
「らしい」と書いたのは、それを誰も確認していないからであり、監査役会による調査でも、田宮弘志監査役が「37万円を(自主返納とは別に返却して)頂いたというのは見つかっていないです」と話している。この場での田宮氏の説明にはしきりに「想像ですけども」という言葉が出てきており、監査役会のおざなりぶりが察せられる。
社会常識から言えば、役員報酬の自主返納と、不適切な支出の返金は別のものだろう。
セクハラの被害者女性と松澤氏の間で解決金100万円を支払うことで合意書を交わし、どういうわけかそこに電気興業が連帯債務者として加わっていることは、前回までに触れた通りだ。
合意書には決められた日までに、被害者女性の銀行口座に振り込むことが明記されているが、実際には近藤社長から現金が手渡しされており、「そのカネは松澤氏が立て替えた形になっている交際費の精算分を保管する秘書室の金庫から手掴みで取り出したもの」(関係者)だという。ローヤルゼリーや納豆などの買い物を交際費として会社に支払わせたカネが秘書室にプールされており、これが解決金に化けたことになる。
まさに「暗闘」である。電気興業は監査役会などではなく、独立した外部の有識者を集めて第三者委員会を立ち上げるべきであろう。