処罰の重さはドイツ並みなのに逮捕もされない

一方、日本の「動物愛護管理法」で定められる刑罰は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」で、ドイツに負けず劣らず重い刑であることが分かる。それなのに、沖縄のユーチューバーによる子猫虐待事件では、動画の中に虐待の事実が残されているにもかかわらず逮捕もされなかった。沖縄県警は筆者の取材に対し「動物虐待の嫌疑はなかった」と回答したが、「たかが猫」だと思っているからなのだろうか。

浦川教授は「改正された『動物愛護管理法』の刑罰は相当厳格であり、しっかり取り組めば処罰できるはず」と話している。

ちなみに、ドイツの動物保護法の刑罰により保護されるのは、飼い主がいる動物に限らない。ドイツではあまり野良猫、野良犬を見かけないが、もし虐待を加えれば、動物保護法第17条で処罰される可能性がある。

動物は愛玩ではなく、生き物としての権利がある

なぜ、ドイツはここまで動物に関する法整備や社会の仕組みづくりが進んでいるのだろうか。それは歴史的、風土的な由来もあるが、国民の意識の高さもある。近年では「アニマル・ライツ」という考え方が浸透し、フランクフルトの目抜き通りなどでも、動物愛護団体が「動物の権利」を訴える活動を行っている。このアニマル・ライツについて浦川教授は次のように語っている。

「愛玩の対象というより、生き物としての権利があるということ、つまり『動物はものではない』ということを意味します。もし『所有者のもの』であるならば勝手に処分できますが、ドイツではそうはいきません」

ドイツの公園の動物たち。人間を怖がらない
筆者撮影
ドイツの公園の動物たち。人間を怖がらない

日本では、動物は人の所有物であるため、沖縄のケースに見るように、子猫は虐待した飼い主に戻されてしまう。この「所有権」が壁となっていることは、多くの動物保護団体が問題視している。現行の法律では、ペットは飼い主が虐待者であっても所有者の元に返さなければならないことになっているためだ。浦川教授も「これについては法律の整備が必要。虐待が起こったときには所有を奪い、必要な処置を講じることができる法律があるべきです」と語る。

ドイツでは、1990年に行われた動物の法的地位の改善に関する法律で、「動物はものではない」と定める条文が挿入された。また、動物保護施設(ティアハイム)では虐待された動物も預かる。日本でもこうした制度作りが待たれている。