警察も動物虐待に注目するように

東京都内にペット動物に関する法と政策を研究する「ペット法学会」があるが、同学会の事務局長で弁護士の渋谷寛氏は、近年、警察も動物虐待に注目するようになった背景について次のように語っている。

「『東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(1988~89)』や『神戸連続児童殺傷事件(1997)』などの事件では、犯人は犯行に行き着く過程で動物虐待していた経歴があることが判明しました。動物虐待は将来において殺人につながるのではないかという観点から、警察も動物虐待を重視するようになっています」

動物虐待を放っておけば、大きな犯罪を招くことにもなる。浦川教授も「社会的に動物虐待を排除していかないと、人が住むコミュニティすら危うくなる」と警戒する。動物虐待は犯罪であり、動物をいじめることを動画にして金銭や注目を集めようとする行為は、どう考えてもおかしいことだ。「そういう法律違反に警察も注目すべきであり、犯罪としてこれを立件していかなければなりません」(同)。

動物虐待シーンの動画配信は、子どもたちの健全な発育にも影響を及ぼす。このような動画は子どもの目には絶対に触れてほしくないと思う一方で、インターネット上では簡単に検索でき、また意図しないところで偶然に見てしまうケースもある。

YouTubeは「虐待動画を報告して」というが…

「こうした動画を目にした後、泣きながらEvaに通報してくる方々もいます。中には食事も食べられない、眠ることもできないと、精神的に不調をきたすケースさえあります。動画を思いがけず目にしてしまったショックは計り知れません」(Eva事務局長の松井氏)。

YouTubeなど動画サイトの管理者に対しても、問題ある画像や動画を自主的に排除するべきだ、といった声もある。YouTubeは「暴力的で生々しいコンテンツに関するポリシー」として動物虐待のコンテンツ投稿を禁止し、発見した場合は報告するよう呼びかけているが、現実はいたちごっこが続いている。浦川教授も「人間であれ、動物であれ、虐待シーンは『表現の自由』などとは関係がない、1つの立派な犯罪です」と述べている。

もっとも今の日本には、動物虐待シーンを動画で公開することへの規制はない。目下、Evaはここへの規制強化に向けた活動にも取り組んでいる。

ドイツのペットショップでは犬や猫の販売を行っていない
筆者撮影
ドイツのペットショップでは犬や猫の販売を行っていない

私たち個人にもできることはある。すでに多くの国民が自分の力で警察や動物愛護団体に通報するなどのアクションを起こしている。日本には日本動物福祉協会のように各地に拠点を持つ団体もあり、動物に関する相談を電話で行うことができる。また、私たちには警察に法令違反者の処罰を求める「告発する権利」が与えられており、これを駆使することもできる。

本稿では動物虐待の動画配信に注目したが、動物との共存を目指すための課題はまだまだある。運動を起こし、声を上げ、「生きとし生けるもの」を無益に殺傷しない、そんな社会を築いていきたい。

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