Q2.今後の交渉をどう進めるべきか?

社会の仕組みが変わると、それによって利益を得る人と逆に損失を被る人が出てきます。そういう意味では農業関係者がTPPに反対するのもよくわかります。諸事情を勘案すると、日本の農業の象徴である米は自由化の例外措置として交渉すべきでしょう。多くの国でつくられている米と日本で食べられている米は種類が違いますから、おそらく、積極的に米を日本に輸出しようという国はないでしょう。一方、アメリカなどに譲らざるをえないのが牛肉で、関税撤廃に近い要求があるはずです。といっても心配には及びません。しかるべき時間をかけ、生産農家には補助金を出す、という経過措置を進めていけばいいわけですから。

反対派の中には日本の医療制度がアメリカの外圧によって崩れることを危惧する人もいますが、杞憂だと思います。TPP交渉参加12カ国のうち、日本と同じ、国民皆保険制度に近い仕組みをとっている国がほとんどで、例外はアメリカだけです。そのアメリカも、オバマ大統領がもっと国民全体に行き渡るような医療制度を模索しています。その12カ国で協議を行った場合、なぜ国民皆保険制度が崩れる結果になるのでしょう。

TPPの交渉は進行形です。しかも二国間交渉ではなく多国間交渉なのです。アメリカが仮に理不尽な要求を突きつけてきたとしても、ほかの参加国と協力すれば、十分跳ね返せるはずです。

TPPはアメリカの陰謀だ、という人がいますが、ある意味、その通りです。あらゆる貿易交渉は自国の利益を最優先するという意味での“陰謀”だからです。日本もその心で交渉に臨めばいいのです。