厳しい国際競争と日本の人口減少

──東日本大震災の被害企業に対し、中小企業庁トップとしてどう動きましたか。
<strong>中小企業庁長官 高原一郎</strong>●1956年、東京都生まれ。筑波大学付属高校卒。79年東京大学法学部卒業後、通産省(現経済産業省)入省。産業政策局調査課長、内閣参事官、中小企業庁次長、関東経済産業局長などを経て2010年から現職。9月1日より資源エネルギー庁長官に就任予定。
中小企業庁長官 高原一郎●1956年、東京都生まれ。筑波大学付属高校卒。79年東京大学法学部卒業後、通産省(現経済産業省)入省。産業政策局調査課長、内閣参事官、中小企業庁次長、関東経済産業局長などを経て2010年から現職。9月1日より資源エネルギー庁長官に就任予定。

現場で何が起きていて、何を求められているのか。それらを把握するために、震災3日後から数日の間に比較的若い課長クラスを現地に向かわせました。

具体的に実施したのは、現場から届けられた生の声を基に、仮設の工場や仮設店舗の建設を、中小企業基盤整備機構を中心に行ったことです。また中小企業政策の大きな柱の一つに金融支援がありますが、特別貸付(東日本大震災復興特別貸付)や保証(東日本大震災復興緊急保証)などを実施しました。しかしながら、二重ローン問題などを含めて、支援政策は継続こそが重要で、まだまだ目が離せない状況が続いています。

──大震災を機に一気に産業の空洞化が加速しているとの指摘もあります。

空洞化にはいろいろなパターンがありますが、2年ほど前から中小企業の海外展開が本格化しつつあるという実感です。中小企業に限らずすべての企業にとって、厳しい国際競争と日本の人口減少は、最大のキーワードであり課題ですね。

1985年のプラザ合意以来、日本企業の海外展開は加速していきました。そういう意味では、今までも空洞化脅威論は何度となくあったと思います。けれども、現在企業が直面している状況は、過去の脅威論とは違う、全く新しいフェーズに来ているのではないかと思います。

──その違いはどこにありますか。

国内に雇用があり、生活基盤があるのは、国としての絶対条件だと思います。しかしながら、同時に企業のグローバルな展開、需要を外に求める動きは止まりません。私見ですが、単なる空洞化脅威論を超えた新しい政策理念が今、必要とされているのではないでしょうか。

もう一つは膨張を続けるアジア市場の存在です。巨大な市場かつライバルであるアジアは、海江田万里経済産業大臣の言葉にあるとおり、日本の外需、内需がシームレス化して、競争環境が激する中では、ますます重要な存在です。