より安全な原発を造り、世界に売っていく
――3月11日に発生した東日本大震災と、それに伴う福島第一原子力発電所の事故は世界に大きな衝撃を与えました。今後のエネルギー政策を展望するうえで、原発のあり方をどう位置付けていますか。
「エネルギーのベストミックスを考えると、火力、水力、原子力、太陽光などすべてのエネルギーの選択肢を残すことが重要だと思います。大震災後、太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーが脚光を浴びていますが、これらが本格的な普及期を迎えるまでには時間がかかるので、それまでのつなぎとして原子力はどうしても必要です。エネルギー安全保障に関する議論もなく、原発が安全か、安全でないかだけで利用を決めるのは危険です。原発なしだと大変コストがかかり、停電のリスクもあって産業が海外に逃げていくのは目に見えています」
――原発事故を起こした当事国として、日本はどのような対応が世界から求められているのでしょう。
「今回のような事故が起きてしまったのは大変不幸なことですが、今後の対応いかんによっては、より安全な原子力関連の技術が生まれてくるはずです。今回の原発事故を契機に生まれてくる新たな資産が必ずあり、アメリカもフランスもそれを欲しがっている。日本がこの原発事故からどう立ち上がるのか、それによって日本が本当に信頼できる国かどうかを世界は見ています。これをうまく克服し、より安全な原発を造り、世界に売っていくことが日本の取るべき道だと思います」
――いきなり原発ゼロ社会は難しいにしても、再生可能な自然エネルギーにシフトしていくのは世界的な趨勢です。
「もちろん、太陽光も、風力もやればいいし、地熱発電も有力な選択肢でしょう。地熱は自然公園法などの制約があるようですが、フィリピンやインドネシアのような火山国は地熱発電をものすごく利用しているのに、日本が使わないのはもったいない。欧州には、再生可能エネルギーを使って発電された電気を一定期間、固定価格で買い取る(フィード・イン・タリフ)制度があり、すでに実施しています。この制度は日本においてもぜひ導入すべきです」