アジアへの地理的優位性、税の優遇、豊富な電力……

<strong>沖縄県商工労働部長 平良敏昭</strong>●1952年、沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業後、77年沖縄県に入庁、行政管理室勤務。2002年商工労働部企業立地推進課長、06年観光商工部産業政策課長、08年企画部科学技術統括監、09年企画部企画調整統括監等を経て、11年より現職。
沖縄県商工労働部長 平良敏昭●1952年、沖縄県生まれ。琉球大学法文学部卒業後、77年沖縄県に入庁、行政管理室勤務。2002年商工労働部企業立地推進課長、06年観光商工部産業政策課長、08年企画部科学技術統括監、09年企画部企画調整統括監等を経て、11年より現職。

日本地図を見ると沖縄の位置は南の端、東京から見れば遠隔地であり、ビジネスには不利というイメージがあるかもしれない。しかしアジア全体に視野を広げてみると、沖縄は経済発展著しい中国沿岸部に近接していることがわかる。

沖縄が本土とアジア主要都市から飛行機で4時間圏内の距離にあることに着目した全日空は、那覇空港を中継基地とする「国際貨物ハブ事業」を2009年10月よりスタートした。これは那覇をハブとして羽田、成田、関西、台北、仁川、上海、香港、バンコクの8カ所を結ぶ航空貨物輸送ネットワークで、アジアにモノを運ぶ場合、成田よりおよそ1日早く到着するメリットがある。

不幸にも東日本大震災という大規模災害が発生した際、沖縄県は知事を先頭に支援組織をつくり、1000人近い被災者の方々を受け入れた。一方で震災をはじめとした原発、電力供給の問題から企業は海外に拠点を移す動きを強めるようになっている。

しかし沖縄県は地震が少なく、特に沖縄本島は近代的地震観測(1926=昭和元年)が始まってから震度5強以上の地震は発生していない。原発は一つもなく、電力供給の心配も全くない。このように、地理的な優位性に加え、沖縄は企業のリスク分散先としてもお役に立てるだろう。

県では産業振興のためにさまざまな企業優遇措置を実施しており、この点からも企業にとって進出先として魅力があろう。たとえば、特別自由貿易地域の設置。通常、海外から貨物を輸入するには税関で通関し関税や消費税を支払う必要があるが、ここでは税を支払わないまま貨物を保管、加工し、輸出することが可能である。

さらに、特別自由貿易地域では立地企業の初期投資を大幅に軽減するための賃貸工場を用意するとともに、35%の法人税所得控除が認められている。わが国の実効税率は41%程度であるが、地域内は実質的に23~26%程度になる。今後はさらに軽減し、シンガポール並みの17~18%程度にできるよう国と交渉している最中だ。また、物流コストについても支援を強化していきたい。