──中小企業のグローバル化は、下請けからの脱却という面が大きいのでは。
最近、静岡県浜松市でのシンポジウムで「スズキ」の鈴木俊宏副社長が関連会社の人たちに「スズキだけを見ないでください。世界に羽ばたいていくことも重要です」と話したのが印象的でした。
グローバル競争の中で関連企業や下請け企業も今や、グローバル展開に目を向けていくのは必然の流れなのでしょう。
──グローバル展開は中小企業にとっても必然だとして、それに伴う海外への日本の技術流出についてどう思いますか。
とても重要なポイントです。本当に何を「国内の技術」として、何を「国際的な技術」と定義するのか。パテント(特許)の問題もありますが、技術のコアを国内に残しながら、海外展開が果たしてできるのか。これは空洞化の問題と似ていますが、技術のコアを残しての海外展開は今後の大きな課題だと思います。
──中国の成長と膨張、サムスンに代表される韓国企業の勢いを前に日本企業が萎縮しているように見えてしまいますが。
今、外部環境的に日本の企業が強い切迫感を持っているのは間違いありません。日本全体が内向きに見えるという指摘もありますが、経験的に見てみると、競争力がついてから外部に開いていくのではなく、開いた後に強くなっていくようなイメージを私は持っています。ある種、日本の戦後は競争環境を克服していくことの連続だったのではないか、と。
政策の役割は新たな経済のトレンドを提示するようなところがあります。中小企業の皆さんにある心理的な壁を取り払ってもらう役目や、企業の成長力に応じた与信が行われる環境を整えるなど中小企業金融のありかたを後押しすることは絶対に必要です。外部に「開いていく」ことは、中小企業はもちろん、日本のすべての企業にとって共通認識であると同時に、直面している重要な課題です。
※すべて雑誌掲載当時
(児玉 博=構成 的野弘路=撮影)