候補を一本化した選挙区の勝率は3割を切った
一方、立憲民主党が議席を増やす方策として取り入れた、小選挙区での他の野党との積極的/消極的な候補者調整を含む選挙協力(以下、野党共闘)の評価については難しいところです。今後の立憲民主党の運営方針と関わる問題にもかかわらず意見が分かれており、新聞各紙の報道には混乱が見られます。
一例を挙げると、日本経済新聞は野党が候補を一本化した選挙区の勝率が3割を切ったことを示した記事で「小選挙区で候補者を一本化する共闘態勢をとれば野党に勝機が生まれるとの定説を崩した」と指摘しています(『日本経済新聞』2021年11月2日朝刊)。読売新聞も同様の数字を示して「5党が期待したほどの成果は上げられなかった」としています(『読売新聞』2021年11月2日朝刊)。
ところが、同日の読売新聞の別の記事では、自民党幹部の「薄氷の勝利」という声とともに「野党の候補者一本化の影響を受け、多くの小選挙区が接戦に持ち込まれた。自民が5000票未満の僅差で逃げ切った選挙区は17に上り、34選挙区が1万票未満の差だった。結果は一変していたかもしれない」と述べていました(『読売新聞』2021年11月2日朝刊)。
毎日新聞も1位と2位の得票率差が5ポイント未満の選挙区の数が49から62へと増えたことを示し、「野党共闘が接戦の増加につながったことがうかがえる」としています(『毎日新聞』2021年11月1日夕刊)。
各紙は我田引水的な数字の使い方をしている
こうして見ていくと、新聞各紙、各記事では、野党共闘を否定的に見る場合には今回のみの勝率や勝数を示し、肯定的に見る場合には得票率差とその前回からの増加を示す傾向があるようです。野党共闘の実際を明らかにするというよりは、我田引水的な数字の使い方をしている印象を持ちます。
何らかの意図があるかどうかはともかく、文意に合わせてデータを「借用」することはマス・メディアではよくあることですし、数字の評価が主観的なのもよくあることです。
しかしその結果、野党共闘の効果がどのようなものかが見えにくくなってしまっています。そして、それにもかかわらず、共闘を見直せ、続けろという大雑把な議論にこうした「分析」が利用されているのは残念なことです。