共産党が候補を撤退させた効果

以上のような説明がわかりにくい場合でも、次の図表2を見れば共産党候補の撤退が野党候補の得票率向上に効果を持ったことが明白であると理解できるでしょう。

野党最上位候補得票率の前回・今回比較
野党最上位候補得票率の前回・今回比較

図表2は、横軸を各選挙区の前回の野党最上位候補の得票率、縦軸を同じ選挙区の今回の野党最上位候補の得票率として各選挙区の値の分布を示しています。この散布図ではAグループ(共産党撤退区)を青、Bグループ(共産党連続不在区)を黄の○印で示しています。

青と黄のマークの分布は重なってはいますが、概ね図の真ん中を横切る斜めの線の左上に青、右下に黄の○が多く配されているように見えます。この赤い線は前回と今回の得票率が同じになる位置に引いており、したがって赤い線の左上側は今回得票率が伸びた選挙区、右下は得票率の下がった選挙区となります。

野党共闘は野党候補の得票率を向上させた

共産党撤退区は概ね野党最上位候補の得票率が上昇し、共産党候補が連続して不出馬だった選挙区の野党最上位候補は得票率を下げた場合が多かったことを、この図は示しているのです。もしこの効果がなければ、青い○の多くは赤い線の右下側に分布し、野党側は議席を増やすことはできなかったでしょう。

なお、重回帰分析という手法により野党最上位候補得票率の変化幅に対する諸々の要因の平均的な効果も別途確認しましたが、共産党候補撤退は概ね8ポイント程度の得票率上昇をもたらしたという計算結果になりました。立民と希望の競合の解消やその他の野党の候補の減少も同程度の得票率の上昇をもたらしたと考えられます。これら野党共闘の効果により、接戦区が増え、野党の勝利が増えたことも明らかです。