共闘区と競合区の単純比較では共闘効果は見えない

それでは、野党共闘の効果を確認するためにはどうすればよいのでしょうか? その基本は夏休みの自由研究と同じで、「比較」を行うことです。野党共闘が行われた選挙区とそうでない選挙区の選挙結果を比較すれば、野党共闘がもたらした効果がわかるはずです。

たとえば毎日新聞は、野党候補が統一された213の選挙区と野党が競合した72選挙区とを比較し、前者が62勝(勝率29.1%)、後者が6勝(勝率8.3%)であったことを指摘し、「一定程度の共闘効果はあったことがうかがえる」としています(『毎日新聞』2021年11月2日朝刊)。

もっとも、この比較は分析の方向性としては間違ってはいませんが、これをそのまま共闘の効果と受け取ることは適切ではありません。野党が候補を統一しなかった選挙区は、そもそも野党側が勝つ見込みが低い選挙区が多いためです。特に共産党は、立憲民主党が勝利できそうな選挙区では候補者を撤退させる一方で、立憲民主党への支持が低く勝利の見込みが低い選挙区では比例区の票の掘り起こしのために候補を残しました。

勝率29.1%と8.3%の差は、共闘の有無以前に野党の支持基盤の厚さ、元々の勝つ見込みで決まっているのです。つまり、偽の相関関係と捉えられる部分が大きいのです。毎日新聞の記事はその点も考慮しており、野党側が敗北した競合区で野党各候補の得票を合算しても与党候補を上回るのは5選挙区に過ぎないことを示しています。