民主主義は最良の政治体制だといわれる。それは本当なのだろうか。元オックスフォード大学教授のキム・ミニョンさんは「残念ながら、すべての人が満足する選挙制度は数学的に存在しない。だが、その困難を克服する方法を見つけ出すというのも数学的な考え方だ」という――。
※本稿は、キム・ミニョン『教養としての数学 数学がわからない僕と数学者の対話』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
「民主主義は可能か?」という問題を数学的に解く
民主主義とは何でしょうか?
重要な意思決定をするにあたって、社会の構成員の大多数が望む要求をかなえることのできる社会体制と言えばいいでしょうか。
よいと思うことをすべてかなえることができればいいのですが、これは不可能に近いです。各自の要求を並べると、どうしても相互に矛盾が生じますからね。
実際にどのように意思決定をするのかという問題を、数理経済学の視点からまとめた理論があります。これは社会選択理論へと発展し、いまでも活発に研究されている分野です。
その中から、誰もが適切だと思えるような選挙システムをつくることが可能かどうかという問題を扱った、有名な理論を1つ紹介しましょう。もう少し刺激的な表現をするなら、「民主主義は可能か?」という問題を数学的に解いてみましょう。