スウェーデン生まれの強化段ボールとの出会い
2010年に創業者の父を継いで2代目社長になった川口徹社長が考えたのは段ボールを使った店舗向けの什器やディスプレイ類の製造、販売だった。欧州では丈夫な強化段ボールが店舗の棚やカウンターなどに使われていることを知っていた。川口社長は同社が培った段ボールの加工技術を生かせば新しい事業に育てられると期待したのだ。
カワグチマック工業が採用した強化段ボールはスウェーデンの「リボードテクノロジー」が製造、販売する「Re-board(リボード)」だ。原材料の85%以上は間伐材が使われるエコ商品でもある。強度は木材とほぼ同じで、重さは同じ厚さの木の5分の1程度と軽い。
そもそも段ボールはリサイクルでき、環境にも優しい素材として注目されている。この夏に開催された東京オリンピック・パラリンピックの選手村では段ボールベッドが使われた。組み立てが簡単で使用後に廃棄する際もリサイクルできる利点があるからだ。
試行錯誤の日々に訪れた転機
2010年以降、什器やディスプレイの担当者を採用し、リボードを使ったBtoBの新規事業に乗り出した。
リボードは曲線に曲げたり、直角に折ったりできるよう工夫がされている。リボードの商品化を目指したのは国内ではカワグチマック工業が初めてだったので、欧州で実際に使われているディスプレイの写真を見て、見よう見まねで加工しようとしたが難しかった。
「最初はどのように作ればいいのかさっぱり分からなかった。試行錯誤をしながらようやくノウハウを蓄積した」と川口社長は振り返る。
転機になったのが中小企業基盤整備機構の販路開拓支援事業にカワグチマック工業のリボード事業が選ばれたことだった。そこで大手百貨店の高島屋と接点ができ、2015年に高島屋で開かれた着物や焼き物などの名匠展の仕事を獲得した。すべての展示ディスプレイをリボードでつくり上げた。