この結果、若手やミドル・マネジメントたちは、それまでのようなコミットメントを出すインセンティブを失いました。

市場価値よりも過小な給与で、企業のために頑張ったとしても、その後にそれに報いるような報酬が用意されているわけではなくなったのです。過小な給与で長時間のコミットメント競争をするのは、むしろバカらしくなります。

「若者の辛抱強さがなくなった」は完全に的外れ

厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」によると、新人社員の3割が3年で辞めているのが直近20年の傾向です。「若い人の辛抱強さがなくなった」などと言われたこともありますが、それは完全に的外れです。

並んで歩く若いビジネスマンと高齢のビジネスマン
写真=iStock.com/stockstudioX
※写真はイメージです

社内でしか通じないネットワーキングのために長い飲み会に行かないのも、社内でしか通用しないスキルよりも汎用性の高いスキルを重視するのも、むしろ、若い人たちの合理的な行動です。いつまでいるかわからない組織でしか通用しないスキルを身につけるために大きな時間を使うのは合理的ではありません。

清水洋『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える』(新潮選書)
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もちろん、自分の会社のビジネスや職場が好きで、「頑張ろう!」と思っている若手だっているはずです。しかし、彼・彼女から見れば、頑なに変化に抵抗するシニアや腰掛けだと思っている若手は、フリーライダーに映るでしょう。どうもそれぞれが違う方向を向いているのです。

さらに言えば、企業としての合理性と個人としての合理性の間にも齟齬そごがでてきているようにも思えます。45歳定年制度は働く人たちのインセンティブを変えるものであり、人々をイノベーションに向かって大きく動機づけるきっかけになる可能性があります。

次回はこの点について見ていきましょう。

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