2人の子供への相続配分を、長男1500万円:長女4500万円にする

この先、資産が減りそうなのは、吉田さんへの結婚資金の援助や、孫が生まれたら、教育資金の援助もしてあげたいと考えている分だ。吉田さんへの援助金に加えて、人生の最後に「もう1回」と考えている車の買い替え費用も見積もっておく必要がある。

援助費用と車の買い替え費用を合計で1200万~1500万円程度と見積もり、医療費や介護費用などとして、1000万~1200万円程度取り置くと、残りは6000万円台になる。

仮に相続財産が6000万円だとして、その金額を4分割して、吉田さんに1500万円、長女に4500万円を相続させるプランを考えた。吉田さんが「1」、妹が「3」の分割割合である。

兄弟姉妹の相続割合は、2人であれば、2人の持ち分の50%ずつになる。仮に相続財産を6000万円とすれば、3000万円ずつが、本来の相続割合である。

ところが、吉田さんが本来の持ち分の50%に当たる3000万円を相続してしまうと、長女の生活が成り立たない可能性が出てくる。そこで、「遺留分」に当たる、本来の相続分の半分を、吉田さんと妹の相続割合の目安にしてみた。

だが、金融資産をまるまる相続できるとは限らない。父親が他界した際、その相続で母親が財産のすべてを受け継げば、「配偶者の税額軽減の特例」によって、1億6000万円まで(相続財産の半額がこれより多い場合は、その半分)までの相続財産には相続税はかからない。

ところが、吉田さんや妹が相続する際は、そのような特例は使えない。つまり、相続対策をおこなわず、現金のまま相続すると、吉田家では相続税を支払うことになるはずだ。

父親の相続の際、母親だけが相続すると、母親の相続の際には相続税が発生するため、現実には住宅資金贈与や教育資金贈与などを相続対策の一環として検討する必要もあるだろう。

また、賃貸に出している家は築年数が30年近く経っているため、この家をアパートに建て替えて現金を減らし、相続対策をおこなう方法も考えられた。アパートに建て替えれば、現金で持っているよりは、相続財産としての評価は下げられる。かつ、将来、妹を大家さんにすることで、親亡き後の生活費を確保できる。

アパートを建てるなどして相続財産としての現金が減った場合でも、相続時点の金融資産を「4分の1と4分の3に分ける割合は同じ」とした。

妹の老後までの算段がついたことで結婚相手の両親も承諾してくれた

ちなみに、大学を卒業してから10年近く実家で暮らしてきた吉田さんには、自分名義の貯蓄も1000万円くらいある。住宅資金贈与や教育資金贈与なども検討してもらえることもあり、「金額の分け方だけを見れば、不公平かもしれないけれど、自分にとっては妹に金銭援助をしないでいいという、保証が得られることのほうが安心できる」と筆者に答えた。

吉田さんは両親と交えて話し合って得られた結果(親が残す資産で、親亡き後の妹の生活は成り立ちそう)を、結婚相手の両親が理解しやすいようにメモにまとめることにした。

吉田さんにとっても、自分の家の資産状況を相手方に公開するのは気が引けたが、金銭面での話し合いの結果を説明したところ、「それなら」と、相手の親も承諾をしてくれた。

それから、半年後。吉田さんは無事に彼女とゴールイン。妹のことが気になりながらも、実家を離れて別の所帯を持ったことから、少しずつ現実の生活のほうに軸足が動いている。

結婚の記念に撮影
写真=iStock.com/yamasan
※写真はイメージです

吉田さんの話からは、妹が働けるようになるとは思いにくかったが、親亡き後の金銭問題については、取りあえずめどが立ったことで、吉田さんの両親も、妹の話題に触れる際、少し穏やかになった気がすると、吉田さんは言う。