「将来は結婚相手の妹の面倒まで見ることになるから、諦めろ」
もちろん彼女も、吉田さんに働いていない妹がいることは知っていたが、家に遊びに行っても、部屋からは絶対に出てこないので、顔すら合わせたことがない。「働いていないことはわかるが、どうして働いていないか」までは、しっかり話を聞いたことがなかった。
彼女は、食事の場では吉田さんの妹について言及しなかったが、数日後、彼女から連絡があり、「この結婚は少し待ってほしい」と伝えられた。食事を終えて彼が帰ったのち、両親に問い詰められた彼女は、自分が知っている妹の現状を親に伝えたのだ。すると、親は次のように言って、諭されたという。
「この結婚を許したら、将来は結婚相手の妹の面倒まで、おまえも一緒に見ることになる。おまえが苦労するのは目に見えているから、この結婚はあきらめたほうがいいんじゃないか」
衝撃を受けた吉田さんは「妹のことで結婚をあきらめるなんて、そんなことは絶対にしたくない」と考え、彼女の親が結婚を渋っていることを、自分の親に正直に伝えることにした。
相手の親から結婚の許しをもらえない状況について、吉田さんの両親(父62歳、母59歳)は大きなショックを受けたが、彼女を気に入っていることもあり、吉田さんの結婚は何としても実現させてあげたいと考えた。
結婚できるようになるには、「妹の生活の面倒を見なくてすむことを証明するのが、確実なのではないか」と考えた吉田さんと両親は、ファイナンシャルプランナーである筆者の元を訪れた。
両親の資産は総額1億円、親亡き後の妹の生活は成り立ちそう
ここからは、吉田家の資産状況を説明しよう。
定年後も継続雇用で働いている父親には、退職金を含めて、7700万円の金融資産がある。この7700万円には、親から相続した資産も含まれている。
そのほか、親から相続した家を賃貸に出しているので、月に9万円の家賃収入を得ている。継続雇用になってから、父親の収入は半分以下に減っているが、家賃収入があることと、吉田さんが結婚するまで家に入れてくれていた月4万円のおかげで、資産は退職時から減っていない。
母親はときどきアルバイトをしていて、年間で20万~30万円くらいの収入がある。この収入は自分の小遣いとして使っている。そして、母親も1200万円くらいの金融資産を保有している。両親と妹が住む家は築25年だが、評価額1300万円。両親の全資産は、家を含めれば1億円以上となる。
さらに今後、家賃収入を引き続き得られれば、年金生活(夫婦で月24万円の予定)に入ってからも、父親の資産はほぼ減らないまま現状維持できることが両親の生活費(支出)と照らし合わせて確認できた。