ロッテ「紗々」は1995年に発売したチョコレートだ。2010年代前半には売上の低迷に見舞われたものの、2015年からの5年間でV字回復を成し遂げた。そして2021年9月には約17年ぶりの品質リニューアルも行っている。何が起きているのか。ロッテのブランド戦略部 チョコレート企画課でブランド担当を務める原田万有さんに聞いた――。

紗々の原点は「たった一枚の布」

左「紗々」、右「紗々<芳醇いちご>」
画像提供=ロッテ
左「紗々」、右「紗々<芳醇いちご>」

ロッテの「紗々」は細い線状のチョコレートが幾重にも重なった見た目の美しさや、パリパリほどける食感が特徴のチョコレートだ。1995年の発売以来、市場に二つとない食感や形状が支持されてきた。

独特の商品が生まれた背景について、ロッテで紗々のブランド担当を務める原田万有さんは「当時の担当者が一枚の“布”に着目したことがきっかけになっている」と話す。

ロッテで紗々のブランドマーケティングを手がける原田万有さん
画像提供=ロッテ
ロッテで紗々のブランドマーケティングを手がける原田万有さん

「1990年代に入り、他社メーカーから相次いで新商品が生まれてくるなか、ロッテとしては『今までにないチョコレートを世に出したい』と考えていました。当時は板チョコ全盛の時代。どう他社と差別化を図るか、という視点で担当者はアイデアを寄せ合っていました。そんななか、1人の担当者が透き通るような布を持ってきて『この布のような模様のチョコレートを作れないか』と提案したのが紗々の原点になっています」

既定路線の延長から企画だしを行うのではなく、発想や着眼点の広がりを意識した結果、1枚の布をモチーフとする紗々の商品開発が始まったのだ。

1995年に発売した紗々のパッケージ
画像提供=ロッテ
1995年に発売した紗々のパッケージ

「やるからにはヒットを生み出す」強い姿勢

だが、布が折り重なる様相や独特の食感を具現化するのには相当な苦労を要したという。

「具体的な製造方法は企業秘密ですが、ビターとホワイトの2種類のチョコレートを『折り重ねる→裁断する→冷却する→包装・箱詰めする』という工程に沿って生産ラインを構築しています。実は紗々のためだけに機械を導入し、何度も試作を重ねながら繊細なチョコレートに仕上げていきました」

これまでに前例のないチョコレートゆえ、売れる保証があるわけでもない。

それなのになぜ、紗々の商品開発にこれほどまでにこだわることができたのか。

「紗々ならではの新しさ・味わいに可能性を感じていたのだと思います。上層部を納得して大掛かりな設備投資ができたのも、『やるからには商品を世に出し、ヒットを生み出す』ことを念頭に、開発担当者の思いから生まれた企画を最後まで諦めない姿勢が強かったのも、紗々が生まれた所以だと考えています」