チョコレートでは少ない「漢字の商品名」
ロングセラー商品として愛される理由として、「他に類を見ない“紗々らしさ”が最大の強みになっている」と原田さんは語る。
「織の美しさ、パリパリとした食感、ビターとホワイトのチョコレートの絶妙なバランスなど、紗々でしか味わうことができないおいしさがあるからこそ、ロングセラーとして支持されていると思っています」
また、紗々というネーミングもブランドの独自性を生み出す要因になっているそうだ。
「当初、商品名を『メッシュチョコ』と銘打つ考えもありましたが、和の繊細さを醸成したいという思いから『紗々』という漢字のネーミングにしました。『紗』は薄く透き通る織物を指す漢字で、『々』は繰り返し重なるという意味が込められています。チョコレートの商品はカタカナのネーミングが多くを占めるなか、漢字で表した商品名のチョコレートはあまりない。これが独自性を生み出し、印象に残る商品として紗々が根強く支持されているのではと考えています」
しかし、他社メーカーも負けじと次々に新商品を投入し、チョコレート市場における熾烈な争いは激化した。
さらに2010年代へ入ると、コンビニやスーパーのチョコレート菓子のみならず、チョコレート専門店に端を発したショコラティエブームが台頭し、チョコレートの多様化が進んだ。
このような状況下で、紗々は次第に他の商品に引けを取る形となり、いつしか販売数は落ち込んでいった。
このままだとロングセラーとしての地位も危ぶまれるなか、「和の世界観に寄せ、繊細で上品なイメージを付与する」ために、2013年にパッケージのリニューアルを行った。
「掲げたのは『つむぐ、織りなす』というキャッチコピーでした。紗々の織物のように重なり合う美しさに加え、上質感や高級感が伝わるようにパッケージデザインを変更したんです」
通年販売に切り替え、5年間で売上174%に
そして何より、紗々のV字回復に貢献したのは「秋冬の限定品」から「通年販売」に切り替えたことだった。
「紗々は今まで秋と冬のシーズン限定で販売していましたが、2018年からは春夏も加えた販売通年化を行いました。以前まで秋冬限定だった理由は、繊細な商品ゆえ、温度が高くなる季節に販売すれば、食感が悪くなったり見た目が失われたりする懸念があったからです。それだと紗々本来の魅力が伝わらないため、販売を見送っていました。
そこで、季節に関係なくいつでも同じ品質で味わえるようにするためにも、チョコレートの配合を見直し、通年販売できる体制の構築に注力してきました。2018年に販売通年化のめどが立ち、シーズンを通して紗々を楽しめる機会を創出できたのが売り上げを伸ばす要因になったと考えています」
かくして2015年から5年間で売り上げを174%に伸ばし、上昇気流に乗ることができたわけだ。