「老後2000万円問題」とは何だったのか?
日本の人口構成は、1950年頃の理想のピラミッド型から、上から下に向けてだんだん細くなっていく形に変化していきます。NHKのドキュメント番組では「棺桶型」などと言われていました。意味深なネーミングですね。
人口構成を見る限り、今の現役世代が年金受給世代になったときには、もはや資金の出所が足りないのは明らかです。政府ももちろん、それはとっくにわかっているから、たびたび年金の受給年齢を引き上げるなどの見直しを行っています。
また、竹中さんが口にしたような「事実」を少しずつ国民に見せ、自立を促したりもしています。
「老後2000万円問題」はその典型です。
年金制度に不安はあるけれど、そこで思考停止していた多くの国民は、ある日突然「老後に夫婦2人が生活していくためには、2000万円の貯金が必要です」と言われて大きなショックを受けたわけです。でも、まともに計算していた人には「何を今さら」という感じでしょう。
2000万円という数字の根拠は、総務省の「家計調査(2017年)」における高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)をモデルケースに算出されています。
このモデルケースの場合、年金を中心とした収入が20万9198円、支出が26万3717円で、毎月約5.5万円の不足が出ます。そこで、あと30年生きるためには以下が必要だというわけです。
つまるところ、今の現役世代は(あるいはさらに若い人たちは)、自分の老後のために、徹底した準備を自分で整えなければならないのです。
もっとも、これは日本だけの問題ではありません。どの国に住んでいようと、お金がなければずっと働き続けなければなりません。北欧や中東の豊かな一部の国を除いて、どこも同じようなものです。
年金はあくまで生活の一部を支えてくれるもの。足りない部分は自分たちで用意しなくてはいけない。こうした考え方にシフトして、今のうちから備えをしている人だけが、数十年後、幸せな老後生活を送れるのです。