でも、それだけでは暮らせない
ただ、勘違いしてほしくないのですが、「年金だけで暮らせる」と言いたいわけではありません。年金はある程度もらえますが、生活費すべてをまかなうほどの額にはならないでしょう。
元金融担当大臣の竹中平蔵さんが、ネットで持論を展開し炎上したことがありました。そのときの竹中さんの発言内容はおおまかに以下のようなことです。
「今の日本の問題は、老後は国が支えてくれると国民が思い込んでいること」
「年金で高齢者全員を生活させるのは無理」
「生きる分のお金は自分で用意しなければダメだ」
これ、竹中さんが自分の願望を述べたわけではありません。ただの事実を伝えただけです。僕もまったくその通りだと思っていますし、ちょっと考えれば当たり前のことなのです。
もともと日本の年金制度は、将来の自分の分を自分で用意する「積立方式」ではなく、「賦課方式」を取っています。賦課方式とは、お金を稼いでいる現役世代が、年金受給世代の必要とする分を国に納めるというものです。
実は、このシステムが考え出された当時、日本人の平均寿命は約66歳。60歳で定年を迎えてからの数年間を暮らせるように、というレベルだったのです。
ところが、今は80歳過ぎまで生きるのが当たり前になって、年金を受け取る年数が長くなりすぎています。また、多くの人が長生きすることで、年金受給者の絶対数も増えます。
一方で、これから現役世代の人数は減っていくわけです。となれば、年金制度が誕生したときのような役割をずっと果たすのは無理に決まっています。
介護保険も25年で5000円以上の負担増に
ちなみに、制度疲労を起こしているのは、介護保険も同様です。
自治体は3年ごとに介護保険事業計画の策定および見直しを行うことになっていますが、そのたびに保険料が跳ね上がっています。
2000年には2911円だった全国平均の保険料は、20年後の2020年に6771円にまでアップしています。そして、それから5年しか経たない2025年には8165円にまで上昇すると見込まれているのです。
介護保険は「65歳以上の高齢者または40歳から64歳の特定疾病患者のうち介護が必要となった人を社会全体で支える仕組み」とされています。そのため、40歳になると加入が義務づけられ、保険料の支払いが生じます。
実際には、40代、50代で介護が必要となるケースはまれでしょうから、ここでも年金制度のように、働き盛りの世代が高齢者を養うという構図が生まれます。
しかしながら、今後さらに高齢者が増えていくことを考えれば、介護保険制度の維持は非常に困難だと言えるでしょう。