「世界中の食卓に和食を」。そんな壮大なミッションを掲げ、5歳の娘と夫とともにキャンピングカーで1年かけて全米を巡る旅に出た女性がいる。600万人を超えるフォロワーを抱えるユーチューバーのMOE(モエ)さんだ。ライターのベック知子さんがリポートする――。 
今年1月、テキサス州オースティンのショッピングセンターで、自身が開発したウマミソースの試食販売をするモエさん夫妻
写真提供=モエさん
今年1月、テキサス州オースティンのショッピングセンターで、自身が開発したウマミソースの試食販売をするモエさん夫妻

開設1年で80万人がフォロー

前編から続く)

高校を中退して舞妓になり、22歳で引退して結婚したモエさんは、再婚と出産を経て、2020年2月に、海外に向けて日本の生活や和食について発信するYouTubeのチャンネル「Kimono Mom」を開設した。1年後の2021年2月、フォロワーは80万人を超えた。

彼女が紹介する和食レシピや着物姿には、日本に興味を持つ海外の人々からの注目が集まった。また、母親、主婦、女性としての生き方、産後うつから立ち直った経験に対しても、世界中の女性から共感が集まった。アメリカに住む女性からは「モエの動画を見て、今から新しいことに挑戦したってまだ遅くないと気づかせてもらった」というコメントが届いた。フォロワーの多くはアメリカ人女性だが、ヨーロッパやアジアなど全世界に幅広くファンが広がっている。

コロナ禍の2020年頃には、外出もできず、家族にも会えなくなった日系アメリカ人から、この番組に助けられたと声が届いた。「自分のルーツを学びたくてあなたの番組を見るようになった」「小さい時に食べていた和食を自分でも作れるようになってうれしい」といったコメントも寄せられた。

一方で、「動画で紹介されている和食を作ってみたいけれど、材料が手に入らない」という悩みを訴えるメッセージも、世界各地から相次いでいた。アメリカのアラスカ州に住む女性からは、こんなメッセージが届いた。

「アニメで見た『月見うどん』を作ってみたいんだけれど、どうやったら作れますか?」

「まずは、だしから」と伝えたところ、近くのスーパーで扱っているアジアの食材は醤油しかないという返事が。海外でのアジア食材事情を知らなかったモエさんはこれに驚いた。

「日本のアニメが届いているエリアであっても、手に入るアジア食材は醤油だけ。世界にはそういう場所がたくさんあるんです」

2022年1月には、YouTubeでお雑煮の作り方を紹介した
YouTubeチャンネル Kimono Momより