お披露目イベントでは600本が完売
考案から3年近くが経った2023年8月、ようやくウマミソースが完成した。外国人にわかりやすく「ソース」という名前にしたが、めんつゆと醤油をかけあわせたような万能調味料だ。水で薄めればそばやうどんのつゆになり、だしのきいた煮物のベースにもなる。バニラアイスクリームにかけると、キャラメル味のトッピングにもなる。
初めてのお披露目イベントとなった、東京ミッドタウン内の伊勢丹サローネのポップアップストアは、初日に500人以上が列を作った。1週間のイベント期間終了を待たず、600本のウマミソースは完売。お客さんの多くが、世界中から集まったKimono Momのファンたちだった。
その後、シンガポール、タイ、香港、アメリカのニューヨークやロサンゼルスの展示会などチャンスがあれば意欲的に出品し、現地のバイヤーやお客さんから直接話を聞くことで海外の反応に手ごたえを感じていった。

現地製造を実現し大手スーパーでも販売
日本での発表と同時に、ウマミソースの需要が高かったアメリカでオンライン販売も開始した。しかし、日本で製造した商品を海外に発送していたため、輸送費と販売サイトの手数料がかさみ、利益はほぼゼロの状態だった。コスト削減のためアメリカでの製造を考えていたモエさんは、柴沼醤油醸造の紹介で、三重県の老舗醤油醸造メーカーの子会社として設立されアメリカでしょうゆなどを製造・販売するSAN-J社の佐藤隆氏と出会う。
佐藤氏は、モエさんから「ウマミソースは必ず消費者に喜ばれる商品になる」という強い自信を感じたと話す。
「彼女は、海外で和食を作るために具体的にどんな要素が足りないのか、はっきりと理解していました。オンラインとはいえ、彼女は、『数百万人のフォロワーの体験』というリアルな情報を持っているからです」
SAN-Jと出会い、アメリカでの製造が実現しつつあった2024年6月、ニューヨークの展示会で、アメリカの大手スーパー「ホールフーズ」との販売契約を獲得する。9月にはアメリカ・バージニア州のSAN-Jの工場で、日本で完成したウマミソースと同品質の商品の生産体制ができあがり、ホールフーズでの販売を開始した。

モエさんの「商品への強いこだわり、泥臭い行動力、そしてあふれんばかりのパッション」は、ウマミソースの魅力が誰にでも伝わる説得力となっていると佐藤氏。
「だから、ホールフーズのバイヤーに会えば即決で全米採用につながり、イベントに立てば1本2000円以上の商品を1日で数百本売り切ってしまう」(佐藤氏)
モエさんの商談力の秘密は、高いコミュニケーション能力とカッコつけずに本音を話すスタイルにありそうだ。
「商談も、YouTubeの動画撮影と同じスタイルでやっています。自分のストーリーや本音を飾らずに伝えています。それで私が失うものは何もないですから。『私たちは、このウマミソースで世界が救えると本気で考えている』と、いつもストレートに伝えています」