「日常的に使うものをすべてこのブランドにしたい」と顧客に思わせるようなブランド・ロイヤリティを確立するにはどうすればよいか。マーケティング戦略コンサルタントである永井孝尚さんは「ブランドを人にたとえたときにどんな人かを表す概念であるブランド・パーソナリティが大切だ。ブランド・パーソナリティがあると、その人格に共感する人を惹きつけることができる」という――。

※本稿は、永井孝尚『モノではなく価値を売るためにマーケティングについて永井孝尚先生に聞いてみた』(Gakken)の一部を再編集したものです。

ブランドとは単なる看板ではない

Q:ブランドの価値を高め続けるにはどうしたらいいですか?

<お答えしましょう!>

ブランドを単なる看板でもロゴでもなく資産価値としてとらえる戦略を立てるべきです。

1980年代、多くの人は「ブランドは看板のようなもの。広告代理店に任せればいい」と考えていました。ところが、世界的なブランド戦略の大家として知られるデービッド・アーカーはブランドを商品や人材と同じく「資産価値」のあるものと考えて、ブランド・エクイティ(ブランド資産)という概念を提唱し、ブランド資産を戦略的に高めることの重要性を強調しました。

信頼こそがブランドである

商品やビジネスモデルには絶えず「模倣リスク」がつきまといます。しかし、企業が築き上げた信頼は簡単には模倣できません。この信頼こそがブランドなのです。

しかし、ブランドは一朝一夕で構築できません。鍾乳洞が石灰を含む地下水の一滴一滴によって長い時間をかけてできるのと同じように、ブランドも企業努力の地道な蓄積の結果、形成されるのです。

また、アーカーは、ブランドの資産価値は、「ブランド認知(それがどんなブランドかを消費者に覚えてもらう)」、「ブランド連想(ブランド名を聞いたときにすぐにどんな商品かを連想できる)」、「ブランド・ロイヤリティ(ブランドを気に入った人が常にそのブランドを選ぶようになる)」の3つによって高め続けられると述べています。

KEYWORD:ブランド・エクイティ
ブランド資産。ブランドが持っている様々な資産価値の集合体。単なるロゴやマークではなく、顧客に選ばれ続ける理由になる見えない資産のこと。