電気炊飯器でおいしくごはんを炊き、みそ汁があれば食事の体裁が整う。みそ汁の味を左右するみそを、多種多様な選択肢から選ぶにはどうしたらいいか。作家で料理家の樋口直哉さんは「スーパーで売られている最も安い米みそでも十分だ」という――。

※本稿は樋口直哉『料理1日目』(光文社)の一部を再編集したものです。

種類がありすぎる「みそ」からどれを選ぶのが正解か?

2皿目の料理は、みそ汁です。

みそ汁を通して「煮る」という調理法を学びましょう。

みそはアミノ酸や有機酸、無機酸、塩類などを含んでいる調味料。ごはんにみそをのせて食べてみると、それだけでおいしいことがわかります。味のバランスがとれている調味料なので、濃度にさえ気をつければみそ汁はそもそも「まずくなりにくい」。そこにみそ汁のすごさがあります。

みそと相性が悪い食材はないので、残っている野菜があればみそ汁に加えれば冷蔵庫の整理にも一役買います。

ごはんとみそ汁があればとりあえず食事の体裁ていさいは整う(そこに漬物か納豆、目玉焼きなどがあれば言うことなし)ので、覚えておくと役に立つ料理です。

スーパーに行くと多種多様なみそが並んでいますが、外見からそれぞれの特徴や味はわからないので、選ぶにはやはり前もって知っておく必要があります。

こんなふうに料理の世界では前提となる知識がなければ〈選びようがない〉食材や調味料がたくさんあります。

スーパーで味噌を選ぶ人の手元
写真=iStock.com/Thai Liang Lim
※写真はイメージです

「好みで選びましょう」は難しい

「どのみそを買えばいいんですか?」

と料理に詳しい人に質問すると

「好きなものでいいんです。好みで選びましょう」

という答えが返ってきます。

たしかにその通りですが、この答えには問題があります。好きなものを選ぶには基準となる味を知らなければ選びようがないからです。

「1kg1000円以上のみそがいい」という意見を聞いたこともありますが、食べ物は必ずしも高価格の商品が優れているわけではありません。価格を頼りにするのはブランド信仰と同じで、自分の基準を外にゆだねること。自分の内側に基準を持てなければ結局は「なにがおいしいのかわからない」という状態におちいるので、その意見には賛同できません。