東京・新橋の「やきとんユカちゃん」を経営する藤嶋由香さんは、コロナ禍の苦しい状況でも客を断ることがあった。藤嶋さんは「店を本当に愛してくれる少数のファンさえいれば、多くのお客様を集める必要はない。ファンがついている店は不況に強い」という――。

※本稿は、藤嶋由香『一緒に飲みたくない客は断れ!』(ポプラ社)の一部を再編集したものです。

売上げは前年の8割減

はじめまして、藤嶋由香と申します。

藤嶋由香さん
藤嶋由香さん(撮影=永峰拓也)

私は東京の新橋で「やきとんユカちゃん」というもつ焼き居酒屋を営んでいます。

2020年3月より、新型コロナウィルスの対策として、「3密」の発生する業態のお店が政府により営業自粛を要請されたのは、ご存じの通りです。

そのときに、私たち居酒屋は、「倒産して死ぬか? コロナで死ぬか?」という究極の選択を迫られていました。

コロナの影響で、あれほどサラリーマンやOLで溢れていた新橋の街はがらりと変わりました。

店を開けていても、お客様は来ません。売上げは前年の8割減になってしまいました。でも、店を開けないことには、ゼロになってしまいます。

大家さんに家賃の支払いを待っていただき、店員さんへの給料の支払いに貯金をすべてつぎ込み、政府からの給付金が振り込まれるのを赤字の状態でひたすら待ち続けました。

しかも、なかなか休業給付金は支払われません。

当時の新橋の居酒屋は、本当に地獄を見ていました。

そこで、新橋の居酒屋仲間で話し合い、「営業自粛要請に従わずに店を開けるぞ!」と、「新橋一揆」を起こそうと結託したのです。

「居酒屋文化」を復興させたい

その「新橋一揆」がニュース番組で取り上げられると、マスコミは取材に殺到しました。

私も多数の取材に応じました。

「生きるために戦うこと」

これは、私の経営哲学でもあります。

「新橋一揆」の「一揆」は、反逆や打ち壊しの意味ではありません。

「心を一つにして危機を乗り越えよう」という思いが込められています。

私は、居酒屋を愛するすべての人と心を1つにし、もちろんコロナ対策をしっかり行った上で、庶民の心を元気にする「居酒屋文化」を復興させたいと心から願っています。

本稿は、「非常識な居酒屋経営術」について書かれたものですが、「不況時に強いビジネス」を構築するための「発想や行動」のヒントにもなるよう構成しました。

コロナの影響で、居酒屋・飲食店オーナーさん、そして世の中の多種多様な業種の方がいま必死で戦っておられます。そんな皆様に向けて、この原稿では、不況時代に生き残る経営術をお伝えします。