[洋食]グリル ツカサ

――人形町の花街にある一軒家の洋食屋さん

●かつては芸者の置屋が立ち並んだ一画は、今も当時の面影を残す。人形町1~2丁目だけで創業50年以上の洋食屋5軒がひしめいているという。空襲をくぐり抜けた築80年超の家屋は店内も渋い雰囲気だ。

●東京都中央区日本橋人形町2-9-10
TEL.03-3666-8997 営業時間/11:00~14:00(13:30LO)、17:30~22:00(料理20:30LO)土・日・祝休 1階14席、2階個室3室

先代が店を開いたのは1959年。洋食の激戦区人形町で半世紀以上生き永らえてきた。父亡きあとは母が継ぎ、88年から息子の中山一彦夫妻が店を切り盛り。デミグラスソースをはじめ、先代のときと随分味は変わったというが、以下の看板メニュー4種は変わらず健在。

1.「ビーフシチュー」(2400円)。通常は小麦粉でデミグラスソースにとろみをつけるが、ここではにんじんと玉ねぎ、にんにくをミキサーにかけたものを使うため、軽やか。
 2.一人前200gの豚肉を使った「カツサンド」(1400円)。あえてキャベツは挟まず、肉だけの直球勝負。
 3.コクが出るようにとベーコンと生クリームを入れた「クリームコロッケ」(1000円)。自家製のパン粉を使って、サクサクとした食感を出している。
 4.ケチャップ味が懐しいオムライス1300円。それぞれセットにすると、プラス1000~1100円でスープ、サラダ、ライスまたはパンがつく。

[おでん]新橋お多幸

――老舗の自家製ダネは洒脱にして滋味深し

●店舗移転の際もカウンターやテーブルは前の店のものをあえて流用、店内には昭和の薫りが漂う。「にしん蒲煮」(470円)、「なすしぎ焼き」(470円)といった昔ながらの肴に加え、刺し身など季節料理も多数。

●東京都港区新橋3-7-9 川辺ビルB1 TEL.03-3503-6076 営業時間/平日15:00~23:00(22:30LO)、土曜~22:30(22:00LO)、祝日~21:00(10~3月のみ営業) 日休 95席

銀座「お多幸本店」からのれん分けが許され、「新橋お多幸」として開店したのは1932年のこと。現在は3代目の柿野幹成さんが継ぐ。戦時中は閉店を余儀なくされたものの、52年から再開。当時から受け継がれているメニューは多い。

1.「おでん盛り合わせ 二丁盛」(2840円)。大根、卵、イイダコなどを関東煮で。つみれは鰯と鰺を合わせた自家製。豆腐は焼き豆腐ではなく木綿豆腐(人形町双葉製)を使う。おでんのお勧めは「ネギマ」。本マグロとネギを軽く煮込んだものだが、出汁のきいたつゆとよく合う。
 2.酒と醤油で炊いた「茶めし」(180円)は、おかわり自由。
 3.八丁味噌をベースにした「ぬた」(470円)。基本はマグロだが、季節によってはアサリを使う。
 4.外はサクサク、中はジューシーの「串カツ」(680円)。奥は「玉子焼き」530円。頼めば67年から厨房に立つ木下善充店長が甘さを好みに調節してくれる。

(撮影=kuma*)