駅事務所には行かずにその場で弁護士を呼ぶべき
「この人、痴漢よ!」と言われて怖くなり、線路に降りて逃げた人が過去にいるが、許可なく線路に降りた場合、鉄道営業法違反で処罰される。それが原因で電車のダイヤが乱れれば、億単位の賠償金を請求されかねない。
さらに、走って逃げる途中で通勤客にケガをさせたりしてしまったら、今度は傷害罪に問われる。傷害罪は痴漢よりはるかに罪が重いから、絶対に逃げてはダメだ!
周囲の乗客から駅に降ろされた場合、駅係員が事務所に連れていこうとするが、断固として拒否し、「弁護士を呼びます。警察の方を呼ぶなら、この場に呼んでください」と伝えよう。
「弁護士に縁はないけど、弁護士を呼べるの?」そう思う方もいるだろう。実は日本には、当番弁護士制度というものがある。これは日本弁護士連合会(日弁連)が提供するもので、警察に逮捕されたときなどには、1回だけ無料で弁護士が対応してくれるというものだ。
可能ならばスマホで最寄りの弁護士会をチェックし、「当番弁護士の対応を依頼します」と伝えてほしい。
また、この場で家族に電話しておくのがきわめて重要。その際には「痴漢冤罪に巻き込まれていること」「どこの駅で警察を呼ばれた」このふたつを必ず家族に伝えてほしい。
特に弁護士への依頼を家族に託す場合は、後者は絶対に欠かせない。逮捕後は、家族へも電話連絡ができなくなる。家族が弁護士につないでくれたとしても、弁護士はあなたが逮捕されている可能性がある警察署をしらみつぶしに当たらなければならなくなるのだ。
痴漢冤罪では、「弁護士の手配が遅れれば遅れるほど無実を証明するのは難しくなる」と認識していただきたい。
個人情報の提供には素直に応じたほうがいい
逮捕前に弁護士に連絡することに成功したら、駅で弁護士の到着を待ってほしい。その際に、警察官から住所氏名などの個人情報の供述を求められたら隠さずきちんと伝えたほうがよい。個人情報を隠すと、「逃亡する恐れあり」と見なされ、逮捕される可能性が高くなるからだ。
実際のところ、弁護士立ち会いのもと、運転免許証などの公的な身分証明証を提示すると、逮捕されずに帰されるケースもある。ただし、後日呼び出しを受けて逮捕・検察庁へ送検ということはあり得るので、解放されても油断せずに、弁護士と今後のことについて対策を練ることだ。
一方、弁護士の到着が間に合わない場合は、任意同行という形で警察署に連行されることがほとんどだ。この場合は「当番弁護士を呼んでほしい」としつこく繰り返し警察官に伝えること。当番弁護士が到着する間も警察官は取り調べを進めようとするだろう。
痴漢は冤罪が多いため、ここ数年は警察も自供だけではなく、物的証拠を残すことを強く意識するようになってきている。そこで重要な物的証拠となるのが、手のひらについた繊維片だ。