事故現場は「青信号の横断歩道」だった
母子が死亡した東京・池袋の暴走事故で9月2日、過失致死傷(自動車運転処罰法違反)の罪に問われた飯塚幸三被告(90)に対し、東京地裁は禁錮5年(求刑・禁錮7年)の実刑判決を言い渡した。
飯塚被告は旧通産省工業技術院の元院長というキャリアの持ち主で、事故当時88歳という高齢ドライバー。公判では「車に何らかの異常が生じ、暴走した」と一貫して無罪を主張していた。事故で亡くなったのは、松永真菜さん(当時31歳)と長女の莉子(りこ)ちゃん(同3歳)。2人は自転車で青信号の横断歩道を渡っていたところを猛スピードで走ってきた飯塚被告の乗用車にはねられた。
東京地裁の判決によると、飯塚被告は2019年4月19日の午後0時10分ごろ、豊島区東池袋で乗用車を運転中、ブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走し、近所に住む母子2人をはねて死亡させた。通行人や同乗していた妻ら9人にも重軽傷を負わせた。
亡くなった莉子ちゃんの名前すら書けない無責任さ
飯塚被告の車を解析しても不具合は見つからず、車載装置にアクセルを最大限まで踏み込んだデータが残っていたことから東京地裁は事故原因について「車に異常があった可能性はなく、ペダルの踏み間違い」と認定した。
飯塚被告の「ブレーキを踏んだが、車は止まらなかった」との公判での供述の信用性を否定し、「年齢にかかわらず、運転者に求められる基本的な注意義務を怠った過失は重大である。過失を否定する姿勢は、事故に真摯に向き合っていない」と厳しく指摘した。
これまでの公判で飯塚被告は3歳で亡くなった莉子ちゃんの名前を「どう書くか」と問われ、それさえ答えられなかった。自らの起こした事故から逃げ続けているのだ。