免許の自主返納は国民の関心度合いで数字が上下する
9月3日付の産経新聞の社説(主張)は「池袋暴走に実刑 判決を高齢事故減の機に」との見出しを立て、こう書いている。
「事故は高齢者の運転による重大事故として、社会的にも大きな反響を呼んだ。平成10年にスタートした運転免許の自主返納制度では令和元年に、前年から18万件近く増えて過去最高の60万件を超え、池袋暴走事故の影響とされた」
「だが、2年前に過去最高を記録した自主返納は昨年、約55万2千件と再び減少に転じた。池袋暴走事故から時間が経過し、影響が薄れたことも原因とみられた。喉元過ぎて熱さを忘れたということなのだろう」
強制されない自主返納は国民の関心度合いで返納の数字が上下する。池袋の痛ましい事故を教訓に、たとえば、その人の日常生活に支障をきたさない限り、「80歳」を超えたら返納する、というようなルール作りの検討も必要だ。
加齢による衰えを自覚するのは難しい
最後に産経社説はこう主張する。
「誰しも加齢とともに反射や判断能力には衰えが生じる。個人差はあるが、過信は禁物である。死亡事故の人的要因では、75歳以上の39%はブレーキとアクセルの踏み間違いといった『操作不適』であるとのデータもある。事故が起きてからでは遅い」
加齢による体の衰えはだれもが経験するが、多くの人は「自分は大丈夫だ」と過信してしまう。子供の運動会で張り切りすぎて、翌朝にひどい筋肉痛に悩まされたという読者もいるのではないか。筋肉だけでなく、反応速度なども加齢によって衰えるが、自覚を持つのは難しい。
衝突防止装置なども普及しつつあるが、完全に事故を防げるわけではない。ある程度の年齢に達した場合は、積極的に運転免許の自主返納を検討したほうがいいだろう。車の事故は他人の命まで奪う危険性がある。