人の頭脳を借りるための工夫

私たち人間は、イメージできないものは絶対に実現できません。スポーツ選手がイメージトレーニングを行う理由もそこにあります。顧客の創造も同様に、顧客や提供する価値、実現すべき目標を具体的にイメージできなければ実現することはありません。

高橋輝行『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)
高橋輝行『メンバーの頭を動かし顧客を創造する 会議の強化書』(あさ出版)

これらを一人で考え実行するには限界があります。

そこで、いろいろな人の頭脳を借りることになるわけですが、それには

1:顧客を創造する適切な「頭の使い方」
2:実現するイメージを創造する「ディスカッションのやり方」
3:目標を実現するための「会議の進め方」

を理解していることが必須です。

顧客を創造する組織にするには、もちろん個人の努力も大切ですが、それ以上に組織に成果を上げさせる役割である経営層やマネジャーが1〜3をうまく操り、社員の「脳力」を高め行動を加速させていくことがポイントです。

ここでは、そのために注意したほうがいい、ディスカッションのポイントを、事例を交えながら6つあげておきます。

(1)盛り上がりすぎて進むべき方向を見失わない

ある会議で、参加者は積極的に発言し、活発なディスカッションが行われていました。ただ、盛り上がりすぎて話が脱線している点が私は気がかりでしたが、会議の進行役は特に気にせず意見に耳を傾けていました。ひとしきり話が終わると、参加者の一人は「あれ? 何を話していたのかわからなくなりました」と言い出し、全員「どうしよう?」という表情になりました。

私は「みなさんは想定顧客について話していて、結論として30代社会人男性をメインターゲットにするイメージですね。では、次は提供価値について話しませんか」と伝えると、みな納得した表情になり、ディスカッションは前に進みました。

イメージが膨らみ始めると、参加者は楽しくなって頭に浮かんだことをつい口にしてしまいます。好き勝手に話をしていると、今何を話しているのかわからなくなり、ディスカッションで進む方向を見失います。

そうならないよう、アイデアが出揃ったタイミングを見計らって話していたことをまとめ、次に進むべき方向性を示します。

ポイントは、(1)話をしていた内容を振り返り、(2)結論をひと言にまとめ、(3)次に考える要素を提案することで、イメージの共通認識を作り次に考えるべきことへ思考を誘導します。