リモートワークでのマネジメントに苦慮する上司

ジョブ型人事制度は、年齢を問わず、職務に必要なスキルを持つ人を登用する「適所適材」が基本思想だ。従来の年功型秩序を破壊する威力を持つ。

運良く管理職に残ったとしても安閑としていられない。さらに追い打ちをかけているのがコロナ禍で激変するビジネス環境への対応と部下のマネジメントという困難な課題だ。

リクルートマネジメントソリューションズの「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2021」(8月23日)によると、管理職層が感じている「会社の組織課題」は多い順にこうした回答になった。

「次世代の経営を担う人材が育っていない」68.0%
「ミドルマネジメント層の負担が過重になっている」(64.0%)
「中堅社員が小粒化している」(以下、63.3%)
「新価値創造・イノベーションが起こせていない」
「難しい仕事に挑戦する人が減っている」

ビジネスの先行きが見通せない中で、経営人材や困難な仕事にチャレンジする社員など人材の育成が重要なことは十分にわかっていても、自身を含めてやるべき仕事が多すぎて手が回らないという実態が浮かび上がってくる。

とくにコロナ禍の部下のマネジメントはリモートワークに変わり、今まで以上に困難さが増している。

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通信事業会社の人事担当役員「部下の能力引き出す管理職は……」

前出の調査で「日々の管理業務で困っていること」で最も多かったのは「メンバーの育成」の48.7%だった。次いで「業務改善」の45.3%と続く。この2つは管理職の職務・職責の最大のミッションともいえる。それができないとなると今の地位も危うくなる。

実際にリモートワークが日常化するなかで、どうやって部下をマネジメントするかを真剣に考えないと生き残れなくなる可能性もある。

通信事業会社の人事担当役員はこう指摘する。

「コロナ前の対面の働き方の時代でもマネジメントが上手くできる人、できない人がいました。リモートになったからといってそれが変わるわけではありません。もちろんリモートになったら、どうやってマネジメントしていくのか自分なりに真剣に考えなければいけない。対面時代でもあまり考えていなかった課長はリモートになるとなおさら無理でしょう。リモートでどうやったらメンバーのコンディションをチェックし、パフォーマンスを計れるのかという方法論を一人ひとりの管理職が真剣に考えない限り、管理職の役割を果たすことはできません」

対面時代は部下の意欲を引き出すために廊下やエレベーターですれ違う際に激励したり、飲みに誘って話を聞いたりしてやることもできた。だが、それができなくなった以上、工夫を凝らさないと降格=減収させられる。