単純な作業は成績向上、複雑な作業は成績低下
まず①の「徹夜してカフェインをとらなかった」グループです。当然と言えば当然ですが、単純なテストも複雑なテストも徹夜後は正答率が下がりました。もちろん睡眠を十分にとった③や④と比較した場合でも、悪い成績でした。
気になる②の「徹夜してカフェインをとった」グループはどうだったか? 実は面白いことに、単純なテストと複雑なテストで違う傾向が見られました。
単純なテストについては、前日と比べても成績は落ちず、③・④並みのスコアを叩きだしました。カフェインをとったことで、睡眠不足の影響をカバーすることができたわけです。しかし一方、複雑なテストのほうは前日と比べ成績ダウン。①の「徹夜してカフェインをとらなかった」グループとそれほど変わらないところまで悪くなってしまったのです。
「カフェインは、単純な仕事においては睡眠不足の影響を補える。しかし頭を使わなければできない複雑な仕事の影響をカバーすることはできない」ということがわかりました。
カフェインの効果と使うべきタイミングは
なぜ、このようなことが起きたのでしょうか。それを理解するために、まず「なぜ眠い時にコーヒーを飲むと、眠気が覚めるのか」について考えてみます。
起きている時、脳の神経細胞は活発に働きます。すると活動の副産物として「アデノシン」という物質ができます。脳には、このアデノシンの量を調べるセンサー(アデノシン受容体)があり、アデノシンが増えてくると活動にブレーキをかけます。このときに感じるのが、いわゆる「眠気」という感覚です。脳の働きすぎを監視し、休息をとれるように促すシステムが、私たちの体には備わっているわけです。
コーヒーなどに含まれるカフェインは、アデノシンと似た形をしています。そのため、アデノシンの量を調べるセンサーにくっつくことができます。カフェインがくっつくと、センサーはアデノシンの量を量れなくなります。その結果、脳にかかっていたブレーキが緩み活動が活性化。そのうえ眠気もとれる、というわけです。
「おお、素晴らしいじゃないか!」と思ってしまいそうですが、ちょっと考えればわかる通り、脳は「自分が働きすぎているかどうか」を認識できなくなっているだけで、働きすぎている状態は変わりません。脳のパフォーマンスは、休息十分な時と比べれば落ちているので、単純な作業はできるようになっても、複雑な作業ではミスを犯しやすくなります。ミシガン大学の研究結果は、このような状態のあらわれであったと考えられます。