「収容という苦痛を与え、追い詰める」
8月13日、真相解明とビデオ開示を求めオンライン署名を続けていた「ウィシュマさん死亡事件の真相究明を求める学生・市民の会」が、5万筆をこえる署名を、丸山秀治出入国管理部長に手渡した。
この日の署名提出会見には、小説家の中島京子さんも駆けつけ、「収容という苦痛を与えて、それから逃れるためには帰国しかない、というふうに追い詰める。収容施設はそのための“手段”と化しているのだと思います。そのことに反省がなければ、何度でも同じことを繰り返すでしょう」と訴えた。
難民に門戸を閉ざし続ける日本
こうした中、アフガニスタンではタリバンが首都カブールを制圧した。カナダのトルドー首相は早々に、他国への退避を求めるアフガニスタンの市民2万人の移住を支援する考えを示した。カナダは米国と共に2001年、アフガニスタンに侵攻した国でもあり、その意味での責任も問われてくるだろう。
ただ、それ以外の国が何も応答する必要がないわけではないだろう。難民条約に加入している、日本はどうか。そもそも日本の難民認定率は1%にも満たず、難民条約に加入しながら、難民にほぼ門戸を閉ざしてきた。そして、入管での冷酷な処遇は、難民申請者に対しても変わらない。
児玉弁護士によると、2001年、突然収容されたアフガニスタンの難民申請者が、解放後に顔を出して会見に臨んだ後、本人たちの銀行口座の残高など、本来の難民該当性とは何ら関係のない個人情報を公開されるなど、法務省からの嫌がらせがあったという。
今後アフガニスタンからの難民申請者への適切な対応が必要である一方、入管行政の根本が変わらなければ、また人権侵害や無期限収容に苦しむ人々を生み出してしまうかもしれない。
ウィシュマさんを最後の犠牲者するために
今回の事件はウィシュマさんの問題だけにとどまらない。2007年以降、17人もの人々が、入管の収容施設で亡くなっている。うち5人は自殺だ。このままの「幕引き」では、ウィシュマさんを最後の犠牲者にすることはできないだろう。上川陽子法務大臣は8月20日、再発防止に向け、省内に「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足させたことを公表したが、まっとうな検証なくしてどんな「改革」が成り立つだろうか。その前に、独立した第三者調査の実施とビデオの開示をすることが、真相解明のため、そして繰り返さないために、国として最低限果たす責務ではないだろうか。