一緒にニュースを見るだけで教えられることがある

では、親にできることは何か?

「国語なんて教えられない」
「塾に通わせているのだから、塾が教えるべきだ」

と思うかもしれない。塾では物語文の読解の進め方は教えてくれる。国語という教科は、ある程度難しい素材文でも、設問に沿って論理的に読み進めていく技術を磨けば、多くは正解を導くことができる。けれど、そこには大前提がある。文章の内容やその背景を子供が理解できるかどうかだ。小学生の子供がまったく知らない時代の話であったり、政治的背景が違っていたりすると、そこでもうお手上げとなってしまう。塾ではカバーできないこの「社会について教えること」こそが、親の役割だ。

今、世の中では、戦争、テロ、いじめ、差別、貧困など、さまざまな暗いニュースが流れている。なかには子供には見せたくないものもあるだろう。また、オリンピックのニュースを見ていると、選手の功績だけでなく、外国人選手の亡命や、メッセージ性のあるポーズをしたことなど、スポーツとは別の一面を知ることができる。こうしたニュースをオリンピックと一つに片付けてしまうのではなく、「どうしてこの選手はこういう行動をとったのだと思う?」と子供に聞いてみるといいだろう。うまく答えられなかったら、親が教えてあげ、親もわからなかったら親子で一緒に考えてみる。

テレビ鑑賞
写真=iStock.com/PhotoTalk
※写真はイメージです

子供を成長させるのは「家庭内の会話」

子供はテレビのニュースを見ていても、ただ見ているだけのことが多い。関心を持たせるのには、親の声かけが必要だ。「このことについてどう思う?」「これってどういうことなんだろうね?」「どうしてこうなったんだろう?」「どうしたらいいと思う?」「これからどうなると思う?」など、親はたくさんの問いを投げてほしい。そして、いっしょに考えてあげてほしい。そうやって、考えるきっかけを与えてあげるのだ。こうしたやりとりが子供の興味を広げ、世の中に関心を持つことへとつながる。

成長途中の段階にいる小学生が挑む中学受験は、成熟度が高い子ほど有利だと言われる。成熟度が高い子というのは、大人と会話ができる子だ。幼いときから、大人と会話をしてきた子は、大人の言葉を耳にすることで、新しい言葉や表現を覚えたり、大人の考えを知ったりすることができる。すると、自然と成熟度も上がってくる。

ところが今の子供たちは、幼いときから習い事を詰め込められ、中学受験の勉強が始まると、多くの時間を塾で過ごすことになる。すると、子供たちの中だけで会話が成立してしまい、語彙を増やすことができない。国語入試では語彙の豊富さも大きく影響する。たくさんの言葉や表現の仕方を知っていることは、大きなアドバンテージとなる。

わが子の国語力を伸ばしたければ、家庭内の会話を大切にすることだ。「まだ幼いから」と子供扱いせずに、大人と会話をするときと同じように話す。テレビでニュースなどを見ながら、世の中で起こっている良いことも悪いこともすべて含んだ「社会の現実」について教えたり、一緒に考えたりする。こうした家庭内の会話が子供を成長させるのだ。「国語を伸ばす秘訣は家庭内の会話」であることを、親は肝に銘じておこう。また、それは受験に有利になるだけでなく、豊かな人間性を育むことにつながる。

(構成=石渡真由美)
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