ビジョンを作成するときの3ステップ
では、ここで一度、チームでビジョンを作成するときの3ステップを説明していきましょう。
①内語り――企業の歴史、文化、風土、強みから、自分たちで自分たちを定義する
まずは、企業(プロジェクト)の歴史やこれからの戦略をつまびらかにして語り合い、その中から強みや弱み、大切にしていることなどを見つけます。
ビジョンづくりに関わるすべての人が、会社(プロジェクト)の過去の営みや未来の戦略を知っているわけではないので、一度すべてをテーブルに並べたうえで、共通の理解を生み、言語化してみるわけです。
自分を知らずに、自分の未来を決めることはできません。ゆえにこのプロセスはとても重要です。でも、これだけでは新しいビジョンが出ないことも事実。なぜなら会社の過去や今の意識を集めても、なかなか新しい視点は出ないからです。そこで、あと2つの視点が必要となります。
②外語り――企業の外で起こっている変化や新しい価値観の兆しを探る
ここでは、社会で起こっている変化について知りうる限りの情報を語り合います。アナログからデジタルへ。経済効率からSDGsへ。消費社会からサスティナブルへ。普遍から偏愛へ、などなど。事業や会社に関することから、会社とは関係ないと思える流行まで、いろいろと挙げてみましょう。
すると、外の環境に対する「自分たちの価値」を考えられるようになり、自分たちがやるべきこともわかってきます。さらに、より時代性に富み、よりリアリティのあるビジョンにもつながります。
③夢語り――自分たちの夢、理想、ワクワクする未来像を語る
最後に、自分が気になっていることやワクワクする夢をいっぱい出していきます。たとえば、SDGsを達成したい、子どもにとって豊かな未来をつくりたい、地元の祭りを盛り上げたい……など、とにかく何でも良いです。
もちろん企業の一員としてつくりたい商品やサービス、企業として解決していきたい課題を話すのも良いでしょう。これを考えているときは無責任であっても構いません。
これらの3ステップを経た後、その真ん中にあるものは、他人事にならず、ワクワクする夢で、しかも世の中にも強く共感される未来像、すなわち「ビジョン」だと言えます。ゆえに、それを選び取れば、正しいビジョンが提示できるということです。
チームに若手の有望株を巻き込む
皆さんが今、企業内でビジョンをつくっていたり、新しいプロジェクトで社内の強みなどをまとめているなら、その議論を活かしつつ、上記3つのうちで足りていない「語り」を追加すれば、さらに精度の高いビジョンができると思います。
そしてもし、新しくビジョンづくりをするなら、そのチームに若手の有望株を巻き込んでください。そうすることで、より「外語り」「夢語り」が今っぽく、熱くなるので、全社的な「自分ごと化」を進める強い原動力になると思います。
ここまで、企業や大型のプロジェクトのビジョン開発について話してきましたが、実は、小さな規模のプロジェクトや個人のビジョンであっても同じプロセスで考えれば、精度が上がります。すべては、「内語り」「外語り」「夢語り」の3つの「語り」をやってみることで、まとまっていくのです。
ビジョンは、大切なものです。でも、使わなければ意味がない。だからこそ、できるだけ丁寧に考え、他人事、無責任にならないように意識してつくってほしいと思います。