クルマ会社から、再生可能エネルギー企業へ
このときのプレゼンでは他にも、初のコンパクトSUVや「テスラ・セミ」というトラック、さらに自社製品の完全自動運転化などの発表もしていましたが、「Energy Positive」(太陽光パネルで発電し、バッテリーとテスラで蓄電し、運転や家庭で電気を使っても、エネルギーが余る状態)の発表で、僕には他が霞んで見えました。
それはつまり、電気を使う会社から、電気を生む会社になることを意味していたからです。
この、エネルギー企業へ転換するというビジョンは、前年に買収している「SolarCity」と合わさって、実現性を帯びていました。いや、もはや、実現するかどうかは関係なく、会場はイーロンの熱量に押されてワクワクしてしまっていました。
世界中の屋根にソーラーパネルを持ち、世界中を走り回る大量のバッテリー(クルマ)と、世界中至るところにある充電施設(スーパーチャージャー)も持ち、さらに、世界最大級の発電と蓄電施設までも持った巨大エネルギー企業の誕生が見えたのです。クルマ会社が、石油やガスや原子力を凌駕する、再生可能エネルギー企業となるのです。
これはまさに、テスラの社員や株主はもちろん、世界中のメディアから、全世界のテスラオーナー(僕もそうです!)までも巻き込む巨大なビジョンの提示であり、ここへ向けてどんどん技術やアイデアをつくっていこうという号令であったとも思います。
やりたいことをやろう! と導いてくれる力
このように、ビジョンを先行させ、そのビジョンに合わせて技術を次々に生み出していく姿勢は、まさに、ビジョン・ドリブン。ビジョンは、企業内や世界の人に夢を与えるだけでなく、それを実現するために様々な開発を進める力にもなるのです。
いま、世界は、混迷の時代に入り、誰もが目指すべき光を求めています。その時代に必要なのは、ちょっと無謀でも「ワクワクする未来」を提示して、そのために努力し汗を流し続けるリーダーたちの姿だと思います。
イーロン・マスクをはじめ、僕が尊敬する経営者に共通するのは、「ワクワクする未来」を妄想し、その未来へ「一緒にいこう」と手を差し伸べる力を持っていること。前例やルールよりも、やりたいことをやろう! と導いてくれる力こそが、人の心を動かし、世界も動かすビジョンを生むのだと思います。
僕らが彼らから学ぶべきことは、「ワクワクする! 一緒にやりたい!」と思えるビジョンをつくることの大切さです。それはきっと、経営者だけではなく、あなたの仕事やプロジェクトチーム、そして家族や友人という小さなコミュニティのリーダーにも当てはまることだと思います。
ぜひ皆さんも、日々の仕事の中で、恐れず、恥ずかしがらず、ビジョンを提案してみてください。きっと、少しずつ、世界は変わっていくと思います。