夫婦ケンカの原因になり得る「脳の性格」

以前、こんなことがありました。ある夫婦から「ケンカが絶えない」と相談を受けたことがあります。話を聞くと、ケンカの原因は、部屋が散らかっているのに何もしない夫でした。

妻の言い分は、「散らかっているのに、どうしてきれいにしないの?」。夫の言い分は、「汚くないから今やらなくてもいいよね」。そんなやりとりから、毎度もめごとに発展するとのことでした。

妻のほうが正しい気もしますが、夫は汚くないと思っているのですから、片づけに積極的にならないのもわかります。

夫婦が見ている部屋は、もちろん同じです。それなのに、妻は「汚い」、夫は「汚くない」。この違いはどうして生まれてしまうのでしょうか?

2人の感じ方が異なるのは、2人の脳タイプが違うからです。私たちは、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚、いわゆる五感で情報を処理しています。

どれも同じように使っていると思っていますが、手を使って何かをするときに無意識に利き手を使うことが多いように、五感にも優先的に使う感覚器とそうでない感覚器があります。

男女の頭の中で歯車が回っているグラフィック
写真=iStock.com/Youst
※写真はイメージです

視覚タイプ、聴覚タイプ、体感覚タイプ……

1996年に、ニューヨーク大学の教育学者であるリースマン博士によって、人それぞれ学習するときに異なる感覚器を使っていることが報告されましたが、その特性から分類されるのが脳タイプです。

私も2000名以上の人を見てきましたが、脳タイプは3つに分かれます。

タイプ1 視覚を優先する視覚タイプ
タイプ2 聴覚を優先する聴覚タイプ
タイプ3 触覚、味覚、嗅覚などを含めた体の感覚を優先する体感覚タイプ

私個人なデータですが、日本の脳タイプを調べると、視覚タイプ44%、聴覚タイプ18%、体感覚タイプ38%という結果も出ています。先ほどの夫婦は、妻が視覚タイプで夫は体感覚タイプでした。

ものが散らかっている状態を見ると「汚い」と感じる妻がイライラするのはわかりますが、視覚情報よりも体感覚が優位に働く夫は、見ただけでは「汚い」と感じられません。夫が悪いわけでもないのです。

そこで私がしたことは、夫にものが散らかっている状態を体で感じてもらうことでした。夫に、「散らかっているものをすべて布団の中に詰め込んで、くるまってみてください。どんな気分ですか?」と聞くと、「こんな状態を妻は体験していたんですか。これは嫌ですね。申し訳なく思ってきました」。

その結果、妻が感じる「汚い」を、夫もようやく理解することができ、以降はもめることが極端に少なくなったといいます。

脳タイプが異なると、夫婦間でも、わかりあえないことはよくあることなのです。