王道を愛するからこそ二刀流が可能になる
——宝塚という熾烈な環境で「おじさん役」というオリジナルの道を見つけ、今は新社会人として歩き始めている天真さんですが、改めて自分の強みはどんなことだと感じますか?
【天真】あるドラッカー研究者の方が、YouTubeで私の本について「ニッチ戦略そのもの」と紹介してくださったんです。それを義理のお兄さんに伝えたら、「ブルーオーシャンに飛び込んだわけだしね」と言われ、ビジネス的視点で見るとそういうことになるのか、と驚きました。すでに多くのビジネスモデルが確立され、さらに副業という道も増えつつある今、何がいいのか混乱している人も少なくないと思うんです。普遍的に存在し続ける“基本のキ”は間違いない。でもそこで自分が芽を出すまでは途方もない時間がかかるのもわかっている。そんな状態で私は、ちょっと冷めた感覚と視点がありました。トップにはなれなくても、逆にその目があったからこそ、二刀流、三刀流ができたのだと思います。
——「宝塚にいながら」「タカラジェンヌでありながら」という視点が、今思えば強みになったということですね。
【天真】自分の素地や経験など、軸となるものは大切にするべきだと思います。その王道を愛し抜いた上で、どこに隙間があるのかを探すんです。軸への愛があれば「背を向けた」とはならず、「好きだからこそあの道へ行った」と理解してもらえますから。私は決して王道ではないけれど、トップを目指すのとは違うマインドでも活躍できることを伝えたいんです。それは宝塚という環境はもちろん、そうでないシーンでも同じこと。著書のタイトルどおり『こう見えて元タカラジェンヌです』という立場を、さらに愛して、極めていこうと考えています。
(構成=本庄真穂)