美容健康商品はインターネットで買うべきではない

このように、現在のインターネット広告は信用に値しないものになっており、その規模も拡大している。もちろん、適法なインターネット広告もたくさんある。しかし、その判別は一般消費者には不可能だ。

著者としては、美容や健康に関する商品はインターネットでは買わず、近所のドラッグストアで買うことを勧める。

インターネット通販を主な販売手段としている事業者は、違法な商売をしても簡単に逃げることができる。行政から厳しい指摘を受けても、販売をやめて、会社を潰してしまえばそれで全てが終わる。

新たな会社を作るにしても、必要な費用は30万円程度と小さい。だから、気軽に違法な広告を打てる。

一方、街に店舗を構えるドラッグストアはそのように逃げることはできない。

閉店するには、数千万円の店内在庫を処分しなければならない。店舗を建物のオーナーに返すには、内装の原状回復工事が必要で、数百万円程度はかかる。敷金も百万円単位で吹き飛ぶ。更に、悪評の影響は単一店舗にとどまらず、同じブランドのドラッグストア全店舗に及ぶ。

そのような構造があるので、実店舗を持つドラッグストアは、経済合理性の観点で法律を守る。仮に経営者や店長が悪人であっても、法律を守ることが最適解になる。だから、実店舗を構える事業者は、インターネット通販を主な販売手段とする事業者よりも信頼できる。

インターネット広告は巨大な闇市となった。わざわざ危険な場所でモノを買う必要はない。美容や健康に関する商品は、近所のドラッグストアで買うべきだ。

儲けられるとしても違法広告は掲載すべきではない

ウェブサイト側として違法広告を消す手段も存在している。「広告枠の単価に一定の上限を定める」というものだ。

最近、違法広告を排除したウェブサイトの事例がある。気象庁のサイトだ。気象庁は2020年9月15日にサイト内でのウェブ広告の運用を開始したが、不適切な広告が数多く表示され、運用を即日停止していた。

その後、2021年7月19日から広告の掲載を再開し、違法広告を排除した結果、広告収入の予測値が年間2.4億円から年間800万円まで減ったという。これは貴重な事例だ。ウェブサイト側が違法広告へ強い対策を打った場合の、収入変動のサンプルのひとつだからだ。

ウェブサイトから見れば、広告枠を高く売りたいのは当然のことだ。しかし、広告枠を極端に高い金額で買う事業者は、違法広告を打っている可能性が高い。だから、高い値段がついていることに惑わされてはならない。

広告枠を売る単価に一定の上限を定めれば、相対的に違法業者の比率は薄まる。

広告枠の単価に上限を定めることは、ウェブサイトにとって広告収入の減少を伴う苦しい決断になるだろう。とはいえ、いますぐ広告収入の違法性を小さくするためには、簡単で即効性のある手段とは言える。

なにより、何も対策をしなければ、インターネット広告への信頼は、これからもさらに地に落ちていくだろう。

インターネット広告業界は、岐路に立っている。痛みを受け入れて違法広告を排除し、健全な広告を掲載するウェブサイトが増えることに期待したい。

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