福島第一原発(イチエフ)の大型休憩所にはコンビニ「ローソン」がある。店長の黒澤政夫さんは「雰囲気が暗くなりがちなので、5人のスタッフにはいつも『喜ばせようぜ』『楽しくやろうぜ』と言ってきました。利用者のほぼ全員が常連客なので、接客には工夫しています」という。ノンフィクション作家・稲泉連さんの著書『廃炉 「敗北の現場」で働く誇り』(新潮社)より、一部を抜粋して紹介する――。
東京電力福島第一原子力発電所の大型休憩所にオープンしたコンビニエンスストア「ローソン」=2016年3月1日、福島県大熊町[代表撮影]
写真=時事通信フォト
東京電力福島第一原子力発電所の大型休憩所にオープンしたコンビニエンスストア「ローソン」=2016年3月1日、福島県大熊町[代表撮影]

「大きなツインシュー」が以前ほどは売れなくなってきた

9時──。

入退域管理施設内の奥の階段を上ってしばらく歩くと、隣接する大型休憩所の2階に「ローソン東電福島大型休憩所店」がある。いわき市の企業「鳥藤本店」が経営するフランチャイズ店だ。

作業員に人気の「大きなツインシュー」が棚に山盛りになっている光景はこの店の名物だが、他にも缶コーヒーやカップラーメンの種類の多さは全国でも群を抜いているだろう。

この時間の店のスタッフたちには、ローソン富岡小浜店からトラックで運ばれてくる商品を受け取る仕事が待っている。開店時間は6時から19時まで。商品の陳列作業は朝と夕方の二度。店長を務める黒澤政夫が言った。

「最近、ちょっと変化が感じられるのは、『大きなツインシュー』などのスイーツ系の商品が、以前ほどには飛ぶように売れなくなってきたことです。“昔”はとにかく甘いものを食べられるだけで嬉しい、という感じだったのですが、最近は控え目。かわりに『ちょっと太ってきちゃってさ』なんて言いながら、生野菜や豆乳を購入する方が増えてきたんです。現場が当時ほど過酷ではなくなったり、各企業が健康診断を奨励したりしていることもあって、作業員の人たちに健康を気にする余裕が出てきたような気がしますね」