すきま時間にフードデリバリーの配達員として働く人が増えている。収入や将来をプラットフォーマーに依存することになるが、職業にしても大丈夫なのだろうか。経営コンサルタントのえらいてんちょう氏は「2週間、体験してみたが、気楽に働けることは間違いない。私が勧める“しょぼい起業”を補完する形であれば勧められる」という――。

※本稿は、えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

ウーバーイーツ
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“しょぼい起業”と“ギグワーク”は補完関係にある

私が推奨する「失敗する可能性が極めて低い」しょぼい起業で、かりに統計上99%の人が成功していても、残り1%の人が失敗で受けるダメージには何の慰めにもならない。政治・経済・宗教と、各所で大言壮語ばかり吐いているように見えるかもしれませんが、私は常々、そうしたミクロの視点を忘れてはならないと考えております。

では、しょぼい起業でもし失敗したらどうするか。あくまでも現時点でのベストとして、私は「Uber Eatsで“保険”をかけろ」と回答したいと思います。

あなたが開いた店のフードデリバリーにUber Eatsを使え、というのではありません(使っても構いませんが、売上の35%を手数料として取られますから、しょぼい起業としてはまず割に合わないでしょう)。目指すべきは「店主として稼げないときは配達員になって補う」というハイブリッドな経営です。

ハイブリッド車が、エンジンのトルクが出ない低速にモーターを使うことでエコに走るかのごとく、「その時々、どちらかで稼げば無理なくやっていける」という自信を持つことで、長期的な成功に向かう足元を固めるのです。

「しょぼくても地に足着けた実店舗の主」であることと「大資本のオンラインプラットフォームに乗って好きなとき稼ぐギグワーカー」という立場は、かなり対照的です。ただそれだけに、足りないところを補い合う関係としては理想的であり、なんなら一方ずつではなく、同時に両立していくことも考えられます。

「理屈ならどうとでも言えるだろ」という声も聞こえてきそうですが、安心してください。これは私自身が2週間、実際にUber Eats配達員を務めた上での結論です。

なぜUber Eatsがしょぼい起業の保険となりうるのか、以下では私の実体験を交えて説明することにしましょう。

「時間自由」は「かけもち自由」

私がUber Eatsの配達員にチャレンジしたのは2020年8月中旬の約2週間。日ごろから夜行性なのと、炎天下での消耗を避ける狙いで、主に21時から翌1時までの時間を充てて、自宅最寄りの繁華街である東京・池袋エリアを、普段の足であるママチャリで回ってみました。

えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)
えらいてんちょう『しょぼい起業で生きていく 持続発展編』(イースト・プレス)

初期投資は、街でよく見るあの黒いバッグの購入費用である4000円のみです。

配達をしていた2週間は、本書の執筆準備をはじめ、子どもの世話といった家事、さらに趣味のオンライン将棋をときおり楽しむ余裕もあり、体調に合わせて時間調整もしました。

何しろ手元のスマホアプリを一押しすれば、その場ですぐ配達員モードに入ることができ、また終わるときも同様ですから、他のことを自由に、いくらでもかけもちできるわけです。

今回のチャレンジは別にUber社とのタイアップでも何でもありません(今後オファーがあれば考えます)。それでも、「いつどれだけ働くか、そのときの気分で自由に決められるのは本当に素晴らしい」というのが正直な感想でした。